あなたならどうする?


 いきなりですが、あなたはコーヒーフィルターの端を折りますか?

 ほら、コーヒーを豆から淹れるとき、紙のフィルターを使うじゃないですか。あれですよ、あの紙フィルターを、富士山をひっくり返したような形の器具に装着するとき、端っこを折って入れるか、それとも、そのまま入れるか。

 いや、なんでこんなことを聞くかというと、ぼくは、なんの疑いもなく折ってたんですよ。そりゃもう、人類が、まだ原始人だったころからやってたっていうくらい、自然に折っていた。もはやDNAに刻み込まれた本能ですよ。

 ところが!

 ある日、彼女さまがキッチンでコーヒーを入れるところを目撃した瞬間! ぼくは雷に打たれたような衝撃を受けたのです。なぜなら、彼女さまは、そのままガバッと豪快に、なんのためらいもなく、紙フィルターの端を折らずに器具に入れていたのです!

 これがショックを受けずにいられようか。機織りのうまい女性に言い寄られてうはうはしてたら、じつは彼女は、むかし助けた鶴だったのを見ちゃったようなショックだ。

 もちろんぼくは、正しいコーヒーフィルターの扱い方を、すぐにご教授申し上げたが、彼女さまは逆に、「なんでそんなめんどくさいことをするの?」と、お聞きあそばされた!

 うっ……理由は知らない。なんてことだ。いままでなんの疑いもなくやってきたことの理由をぼくは知らないのだ。冗談抜きで、DNAに刻まれた本能に近い行動だったのだ。

 ぼくは、しろどもどろになって、たぶん、富士山をひっくり返したような器具との隙間を、ぴったり埋めるためなんじゃなかろうかとかなんとか、適当なことをいいながら、でも、とにかく紙フィルターの端を折るのは、社会常識であり、大人のたしなみであると主張した。

 ふだんは、人を信じやすい性格だとおっしゃっている彼女さまは、ぼくを信じなかった。紙フィルターのパッケージに、端の折り方が書いてるのを見て、やっと信じたのだ。っていうか、いままでパッケージの説明書を読まなかったんかい! と申し上げたら、説明書と名のつくモノは、とりあえず読まないとのお答え。アバウトに生きてらっしゃるなァ。

 しかし! 本当の問題はここからなのだ。

 なんと彼女さまは、製品の説明を読んでも、まだ納得しなかった。折り方は書いてあるが、なぜ折るかの理由が書いてないというのだ。お、おっしゃるとおりです。そこで彼女さまは独自の調査を開始し、ネットから情報を得た。彼女の調査によると、むかしの紙フィルターは品質が悪く、端っこが破れて、コーヒー豆がカップの中に出ちゃうことがあったらしい。それを防ぐために、端を折るようになったのだとか。

 えー、ホント? そりゃ存じませんでした。ここで彼女さまは、勝ち誇ったようにいった。いまは紙フィルターの品質が悪いなんてことはないから、折らなくてもいいのだと。

 むむっ。敵ながらやるな。

 もちろん、ぼくも負けてはいない。端が破れる説が正しいとすると、たとえ品質がよくなったとしても、破れる可能性はゼロじゃない。つまり、フィルターの端を折るのは転ばぬ先の杖なのだ。後悔は先に立たないが、これは先にできる安全策なのだ。しかも無料でだ! タダで掛けられる保険なら、万が一のために掛けておくべきではないか!

 うはは。どうだ! だれがどう読んでも、ぼくの主張が正しいと思うだろう。ところが彼女さまはいったのだ。「え〜、めんどくさいよ」と。さすがアバウトさん(笑)。

 そこで、みなさんにお聞きしたいのです。

 あなたはコーヒーフィルターの端を折りますか?

 トップページからから入れる、感想掲示板で、みなさまのお答えをお待ちしています。(アンケートは2010年6月9日で終了しました。ご協力いただいたみなさま。ありがとうございました)


※2010年6月9日追記
コーヒーフィルター事情のアンケートを、約一週間ほど行い、結果を「わたしならこうする」と題したエッセイにまとめました。どうぞ、合わせてお読みください。


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