i してる?


 前回、携帯電話のSIMロックについて書いた。ざっとまとめると、日本の携帯電話は、SIMロックを前提とした、キャリアの専用端末として進化してきた。それが、いろいろ便利な機能を産んできたのはたしかだ。

 でも、時代は変わる。過去10年の成功が、これから10年の成功には、必ずしも繋がらない。現時点では、SIMロック解除に様々な問題があるのは、わかっちゃいますけど、SIMロックは解除する方向へいった方が未来は明るいんじゃないですか?

 という内容のエッセイだった。なんだよ、ずいぶん長く書いたけど、5,6行でまとめられるじゃんか。みたいな(苦笑)。

 で、ですね。前回のエッセイを書いてから、またまた、ドコモが興味深い発表を行ったので、ちょいとフォローしておきたい。ぼくなんかが、ウダウダいうまでもなく、ドコモさんはわかってて、未来に向けた施策を、ちゃーんと用意してたのだ。

 おっと、その前に。

 前回のエッセイを書いたあと、読者さまからメールでご指摘をいただいたので、まずはそのことについて書いておきたい。

 エッセイの書き出しで、日本には、SIMカードの入っていない携帯電話は存在しないと、とれる表記があった。しかし、日本で採用された方式の2G(第二世代)携帯電話には、SIMカードは入っていません。海外と同じGSMは、採用されなかったのだ。でもね、auとソフトバンクは、すでに2Gは終了し、ドコモも2012年には使えなくなるので、もうほとんど市場にはないと思います。ということで、前回のエッセイでは、ああいう書き方になりました。

 それと、iモードだってオープンな開発環境だから、その意味では、iPhoneやiPadと変わらない。というご指摘もいただいた。じつは、この点について、ぼくは専門的な知識もなく、前回のエッセイを勢いで書いちゃったのだ。ご指摘をくださった読者さまには、キチンと書き直したい旨をお伝えしたのだけど……自分で正しい情報を調べるのには、さすがに限界があるみたい。iモードの仕様や(どこが、どうオープン環境なのか?)、アプリの流通まで含めたオープン環境というのが(いわゆる野良アプリではなくて)、どのように機能しているのか。こういった点にお詳しい方がいらしたら、こそっと教えていただけませんでしょうか? すいませんね、いつも他力本願で(汗)。

 閑話休題。

 さあ、そういうわけで、新しい情報へ移ろう。時代は、どんどん変わりまっせ!

 えー、このエッセイを書いているいまも開催されてるんですが、7月14日から16日までの3日間、東京ビッグサイトで、「WIRELESS JAPAN 2010」というのが開催されてるんですわ。ワイヤレスっていうだけあって、無線を使った情報通信の総合展示会ですな。

 その展示会の初日(7月14日)に、ドコモの山田社長が、基調講演をしましてね。そこで解説したんですよ、こんごのドコモの進む道を。その中で、とくに興味深かったのが、9月からはじまる、「spモード」と呼ばれる新サービス。(spモードの正式発表自体は、13日に行われたらしい)

 iモードならぬ、spモード。これはなんぞや? spは、スマートフォンの頭文字でしょうが……はたして、その実体は?

 いやー、これがね、なかなか画期的なんですよ。前のエッセイで話した通り、ドコモのiモードは、ドコモの端末でしか使えない。流行のスマートフォンではiアプリはもちろんのこと、iモードメールさえ、直接は送受信できないんですよ。もち、ドコモの絵文字も使えない(突っ込まれる前に書いとくけど、ドコモが用意した特殊なサイトへアクセスすれば、読み書きはできますよ。プッシュは無理だけど)。

 それではダメだと、一番わかっていたのは、じつはドコモさんだったみたい。ドコモは、スマートフォン上に、iモードを実行できる環境を仮想的に作るアプリを配布し、そこでspモードと名付けた接続技術を実行し(たぶん、アプリ上でAPNを指定し直す技術だと思われるけど……そういう理解でいいのか、ちょっと自信がない)、スマートフォンでも、iモードメールを直接読み書きできるようにするというサービスなんだ。

 要するに、スマートフォンでも、iモードメールが、いままで通り使えますよってこと。

 なーんだ、いまごろそんなこといってるんだ。と思う方もいらっしゃるかもしれない。というか、ぼく自身がそう思っていた。

 ところが!

 山田社長の発表内容を理解するにつれ(いろいろネットの情報をかき集めて、それを咀嚼するのに、時間がかかるんです。書いてあることが難しいんだもん!)、こりゃ、すごいことだと思いはじめた。

 というのは、spモードという名前こそなかったけど、ドコモは、かなり前からスマートフォンでもiモードメールを使えるようにしたいと語っていた。でもそれは、ドコモの売る、ドコモのスマートフォンにために、やるんだと思っていた。

 もちろん、spモードだって、基本的にはそうなんだけど……ドコモさん、SIMロックの解除に踏み切る覚悟を決めたから、ドコモ以外のスマートフォンでも、使えるようにするんだってさ!

 おっと、勘違いしないでくださいよ。auや、ソフトバンク、あるいは海外で買ってきたスマートフォンで、iモードが、そのまま使えるわけじゃない。

 まずは、ドコモと契約して、ドコモのSIMカードを手に入れてください。そのSIMカードを、SIMロックフリーのスマートフォンに入れれば、あ〜ら不思議! ドコモで買ったスマートフォンじゃないのに、ドコモのスマートフォンと同じように、iモードメールが使えるわ。ってこと。

 これは、すごいよね。ガラパゴスだなんだと、さんざん文句をいわれたiモードを、ついに端末から切り離し、「サービス」として、独立させることにしたわけだ。いま現在は(というかサービス開始の9月時点では)、spモードの動く端末は限定されるみたいだけど、来年のSIMロック解除へ向けて、どんどん門戸が解放されていくだろう。iモードメールだけでなく、iアプリまで動くようになったりして!(仮想化技術なら不可能じゃないはず)

 そして、その先にドコモが見ているのは……

 もちろん、iPhoneでしょうね(笑)。iPhoneでも、iモードが使えるようにしちゃうわけですよ。Appleのお許しが出ればですけど。でも、お許しが出る可能性はありますよ。本家アメリカでも、iPhoneには、AT&TのSIMロックがかかってるけど、来年からはベライゾンというキャリアでも、iPhoneが使えるようになるらしいし。

 ということは、日本でも、ソフトバンクだけでなく、べつのキャリアでiPhoneが使える日が来るかも! ドコモのSIMカードが入るかも! ソフトバンクさん真っ青ね。

 いえ、そのソフトバンクだって考えてますよ。さきの「WIRELESS JAPAN 2010」では、ソフトバンクも将来の施策を解説した。彼らも、端末に依存したサービスから、端末に依存しないサービスへ向けて、舵を切り直しているところらしい。

 まあ、日本で唯一iPhoneを売ってるキャリアだから、そりゃ当然でしょとも思うけど、なんと彼らは、キャリアでありつつ、コンテンツプロバイダーになりたいと思っているようなんだよね。つまり、ソフトバンク自身が、ゲームを開発したり、電子書籍を出版したりしたいらしい。

 さらにKDDI(au)も、もちろん考えていらっしゃる。ぼくの理解が正しいか、いまいち自信がないけれど、KDDIは、コンテンツプロバイダーそのものではなくて、コンテンツプロバイダーに、ビジネスのノウハウを伝えて、auの回線上で、一緒に金儲けをしましょうという、コンサルタント事業を考えているようだ。(それだけじゃなく、もちろん、EZメールをスマートフォンで使えるようにしたりも)。

 ドコモは、iモードを「発明」した会社だけあって、プライドを持って、iモードをオープンにしようとしている。ソフトバンクは、将来、放送局や出版社のような存在になっているかもしれない(もともと出版には強いし)。auは裏方として、コンテンツプロバイダーを支える存在になっているかもしれない。

 なんにしても、いまと同じ商売だけではダメだと、みんながんばってるんだね。ホントぼくみたいなのが、偉そうに文句いう必要はなかったわけです。と、いいつつ、これからも偉そうにエッセイ書くけどね(笑)。

 あ、そうだ。さっそく偉そうに、ドコモのspモードの宣伝考えたんですよ! ほら、よくハートマークの中に、I Love NY とか、I Love LAとか書いてあるTシャツ売ってるじゃないですか。それをもじってですね、ハートマークの中に、「i してる?」って書いたロゴマークを作ったらどうでしょう? ね、山田社長。

 なに? そんなの小学生でも思いつくって? ギャフン(←死語)。



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