3月と言えば……


 三月と言って思い出すのは、東京大空襲(1945年3月10日)の追悼と、蒲池法子さんの誕生日(1962年3月10日)だ。

 蒲池法子さんってだれ?

 え? ご存じない? 松田聖子さんの本名ですよ。いまは神田法子さんだけど(離婚しても神田性を名乗るんだそうで)。ああ、そういえば3月10日は、Script1とかいうサイトをやってるTERUとかいうヤツの誕生日でもあるらしいけど、まあ、そんなことはどうでもよろしい。

 もう一つ思い出すのは、というか、忘れるとあとで怖いのは、ホワイトデーだ。ちょうどそのころ、仕事が忙しかったんだよね。飛行機に乗って、南の島まで写真撮りに行ったり。

 でも仕事で忙しいはホワイトデーをスルーする理由にはならない。忙しいさなか、ぼくは彼女さまに銀座のデパ地下へ連れて行かれ、よく知らないが、どうやら有名らしいお菓子屋さんのクッキーを買わされた。しかも50個入りだぜ! それを全部ひとりでお食べになる気満々なんだから、なんともほほえましい話だ(と、言っておこう)。

 さらに、五歳の姪からもバレンタインのチョコをもらってしまったので、そのお返しも買わねばならない。でもさあ、もらったと言っても、あとで聞いた話によると、好きな男の子のために手作りしたチョコ(五歳のくせに!)の、余ったヤツらしい。余りもんかよ。ええ、いいですよ、どーせ、おじちゃんはオマケですよ(クスン)。

 まあともかく、姪にどんなお菓子がいいか聞いたらビックリだぜ。なんと生チョコがいいと言いやがった! 血は争えないな〜。ぼくも生チョコ大好きなんだよねー。しかしまあ、それにしても先の思いやられる姪だ(苦笑)。

 さて。これで三月のイベントは終わり……だけど、ぼくは密かに楽しみにしていたことがあるのだ。ご存じの方はご存じだろう、今月は、かの有名なシャーロック・ホームズを主題にした映画が公開されるのだ!

 告白しよう。いや、告白するまでもなく、Script1の読者さまなら、ぼくがシャーロック・ホームズ大好き! なのをご存じのはずだ。

 彼女さまには、疲れてるんだから仕事が落ち着いてからにしたら? なんて言われたけど(どうやら、マジで疲れた顔をしていたらしい)、一刻も早く見たいのだ。前売り券だってちゃんと買ってある。シャーロキアンの義務として、死んでも見に行くぞ!

 というわけで、仕事の合間を縫って、ワーナー・ブラザーズが制作した『シャーロック・ホームズ』を見てきた。言わずと知れたコナン・ドイルが生み出した名探偵シャーロック・ホームズの映画化。

 とはいえ、原作はコナン・ドイルではない。シャーロック・ホームズには、世界中に数え切れないほどのパスティーシュ作品(作風の模倣)が存在する。要するに、二次創作だね(ドイルは80年前に他界しているので、彼の作品の著作権は切れてる)。

 シャーロック・ホームズ好きが高じて、独自の研究までやっちゃうようなファンのことをシャーロキアンと呼ぶんだけど、そういう人たちが、熱心に書くわけよ。二次創作を。プロの推理小説作家として成功した人たちにもシャーロキアンは多い。

 ワーナーが作った映画も、そんなパスティーシュの一種だ。ウィキペディアによると、直接の原作は、ライオネル・ウィグラムが描いたオリジナル・コミックなんだそうだ。監督はイギリス人のガイ・リッチー。そして、意外なのはホームズの配役で、なんとロバート・ダウニー・Jrが演じている。

 ぼくのようなシャーロキアンにとって、映像化されたホームズとしては、イギリスのグラナダTVが製作したシリーズに主演したジェレミー・ブレッドが最高だと信じている。グラナダの作品は、ドイルの原作を、忠実に映像化することを至上命題としていたから、ブレッド演じるホームズは、そりゃもう、なにからなにまで完ぺきにホームズだった。しゃべり方も、ちょっとした仕草も(椅子に座るところまで!)ホームズそのもの。グラナダの作品が、世界中で高い評価を得たのもうなずける。

 だから、ロバート・ダウニー・Jrの演じるホームズには、じつのところ懐疑的だった。まあ、べつの物語として見ればいいかぐらいな気持ちで見に行ったのだけど……

 驚くべきことに、なんと、ちゃんとホームズしているじゃないか!

 いや、そりゃ伝統的(?)シャーロキアンから見たら、許せないところは多々あるよ。ホームズはあんながさつじゃないし、そもそもロバート・ダウニー・Jrでは、見た目の雰囲気が若すぎる(シャーロック・ホームズの実年齢は謎なんだけどね)。ジュード・ロウ演じるワトソンだって、まるでアクションスターみたいだし、レイチェル・マクアダムス演じるアイリーン・アドラーにも、知性が感じられない。

 それでも、ハッキリ申し上げられる。この映画はいい。好きだ。

 とくに、ロバート・ダウニー・Jrのホームズには感心した。中身はしっかりホームズしてるんだよ。ぼくの勝手な邪推だけど、ロバート・ダウニー・Jrは、ジェレミー・ブレッドの演じたホームズを、かなり研究した上で、どこを崩して、どこを模倣するべきかをよくよく考えたんだと思う。シャーロキアンしか気づかないだろう細かい仕草を研究したあとがうかがえる。その上で、彼らしいホームズ像を作るのに成功しているようだ。

 と……このくらいにしておこうかな。あとはみなさんも映画館か、DVDで楽しんでください。シャーロック・ホームズが好きな人なら、きっと楽しめると思うよ。また、そうでない人も、いかにもハリウッド映画らしいエンターテイメント作品に仕上がっているから(一応イギリス映画と言うことになっているが)、それほど飽きることなく見れるだろう。


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