さよなら2008年


  2008年が終わる。今年もっとも注目されたニュースは、やっぱりオバマさんだろう。そして、いまも続く金融危機が第二位ってとこかな。オバマさんと金融危機は、2009年も話題の中心であり続けるだろう。

 と、ぼくがクドクドいうまでもなく、そんなこたあ、みなさん先刻ご承知でいらっしゃる。じゃあ、今年最後のエッセイでなにを書こうかって考えてたら、今年書いたエッセイを振り返ってみるかと思い至ったので、さっそく始めよう。

 今年最初のエッセイは、「薬物混入ギョーザ報道に思うこと」だった。いろんなことが起こりすぎて、すでに過去の事件のようだけど、まだ未解決なんだよね。

 エッセイを読み返してみると、彼女が体重計を買って、それに乗らされたら、なんか脂肪の比率が高いと表示されたらしいことが書かれている。

 うーむ。薬物混入ギョーザは、社会的な大問題だが、脂肪の比率は、個人的大問題だ。じつは、先日やっと健康診断にいったのだけど、その結果は、おおむね健康という診断だった。おおむね? そう。完全に正常ではない。中性脂肪の値だけは高かったんだよね〜。体重計当たってるジャン! じゃなくて! 医者には、このままずーっと、中性脂肪の値が高いのはマズイですぜ〜。と、脅かされた。くそう。痩せなければ……

 さて。社会的大問題の方の、薬物混入ギョーザだけど、こちらも、中国国内ので混入が、ほぼ確定的となった。そこで情報が止まっている。捜査に進展があったのに、中国側が隠しているのか、それとも真相がまだ闇の中なのか……謎は深まるばかりだ。右より思想の強い、どこかの二流経済新聞記者のような態度ではなく、ジャーナリストのみなさんには、冷静かつ科学的に、この事件を追い続けていただきたいと切望する。

 つぎに書いたのは、「報道のような決定をした事実はありません……の謎」。これは東芝が、HD DVD から撤退するという報道を否定したあと、すぐに、撤退を発表した理由について考察している。それにしても、東芝の表現である「終息」というのが、負け惜しみっぽくていい感じだよね。すごく悔しい! って思いがにじんでいる。本当に悔しかったんだろうなあ。こういう「行間を読む」行為って楽しいよね。

 おつぎは「SoftBankの謎」だ。今年ソフトバンクの端末を手に入れた話だね。複雑に見えるソフトバンクの端末販売方法は、じつは、なかなか合理的だという話をした。でもね、ケータイ業界は、変化が早いから、ソフトバンクの状況も、いろいろ変わりつつある。それに伴って、当時ぼくがソフトバンクに抱いた「好感」は、すっかり消え失せて、いまはソフトバンクには、問題が多いなあと思っている。

 まず、好感が薄れた原因のトップは、iPhoneだ。正確には、iPhoneの立ち上げのときのイベントが悪かった。エッセイの「誰がためにiPhoneは鳴る」でも書いたから、繰り返しになっちゃうけど、あえて繰り返そう。

 孫さんは、iPhoneが一部のAppleユーザーや、新しもの好きの人たちに熱望されているのを利用して、うまく「大流行」感を演出した。それはいいけど、炎天下の表参道に「行列を作らせる罠」を仕掛けて、将来ソフトバンクの売り上げに貢献してくれるだろうお客さまと、あまり知能指数が高いとは思えないマスコミを踊らせたのはいただけない。孫さんには、コンプライアンスを重視する、新世代の経営者という印象を抱いていたから、なんだ、いままでの経営者と、なにも変わらないのかという落胆が大きかった。

 いや、こんなこと書くと、なにを青臭いこと言ってるんだと怒られるかもしれない。つい最近も、マクドナルドが、アルバイト雇って、新製品の販売イベントに並ばせたことが報道されていた。ソフトバンクみたいなことは、みんなやってるんだよ。そんなことで、いちいち目くじら立てんなよ。

 まあ、そうかもしれない。そのくらいやらなきゃ、商売で成功しないのかもね。でも、本当にマジメにコツコツやってる会社だってあるんだよ。中小企業の中にはさ。金融危機というのは、企業の「やりすぎ」が大きな原因のひとつなんだから、地味でマジメな商売は、これから見直されていくと思うな。また、そうなってほしいよ。

 事実ソフトバンクは、そろそろ「やりすぎ」のしっぺ返しをくらいはじめている節がある。ぼくが合理的だと評価した、端末の販売方法も、端末が売れているときは、売り上げに高い貢献をしていたけど、売り上げが鈍化したいまとなっては、お金を落としてくれないお客を集めるだけになっている可能性がある。

 お金を落としてくれないお客とは、つまり、タダ友ばっかり使って、ソフトバンクに通信料を払ってくれないお客さんって意味。その点、炎天下に並ばせたiPhoneのお客さんは、通信をバンバンやってくれるから、一番いいお客さんだよね。

 ソフトバンクは先日、Yahoo!ケータイのトップページを、有料にすると発表した。このことは、通信料を払ってくれないお客から、なんとかして通信料をむしり取りたいという願望の表れだ。ソフトバンクは、トップページを有料にする代わり、タダで読めるコンテンツを増やしたと説明したけど、タダで読めるコンテンツを増やしたのは、そのコンテンツをより利用してもらうための呼び水なのであって、トップページを有料化したことへの代償ではない。

 そんなこと、ユーザーもわかっていたんだろうね。大ブーイングにあって、ソフトバンクは、Yahoo!ケータイのトップページを有料化するのを断念した。

 というわけで、ソフトバンクは、なかなか苦しい台所事情のようだ。知能指数の低いマスコミは、iPhoneが売れてないとかいってるけど、iPhoneは、いまも地味に売れてるらしいよ。そして、iPhoneのお客さんは、ほとんどが、ソフトバンクが喉から手が出るほどほしい「通信料を払ってくれる」お客さんだから、彼らを炎天下に並ばせたことを大いに反省して、これからは優良な顧客に対して、サービスを強化してくるかもしれないね。そうであってほしいよ。

 つぎに書いたのは、数学のエッセイだけど……まあ、これは、あらためて書くことはないな。

 そのあと、健康器具の話を書いた。「60秒の美脚」だ。思い出したくないな。自分への戒めとして、まだ部屋の片隅に置いてあるけど、マジで邪魔だ。うーむ。

 で、ぼくは自転車へ逃げた。「欲望の道具」の冒頭で、そのことを書いたけど、そのエッセイの主題は、金融危機についてだった。とくに、金融業界の常套手段といえるレバレッジについて解説してみた。あれから、二ヶ月近くがたったけど、金融危機は収まる気配を見せない。オバマさん大変だよなあ……

 でも、金融危機で大喜びした人も多いと思うよ。なにせ、金融商品で儲けるには、市場に流動性が必要だからね。今回の危機では、流動性どころか、乱高下がずーっと続いてるから、かなり大儲けした人もいるはずだ。

 そして、新興市場が疲弊しているのも、日本にとって追い風になる可能性がある。新興市場の企業は、財務体質がもともと脆弱だから、お金が回らなくなると、バタバタ倒れていく。その点、日本の企業は、彼らより財務に余裕があるから、いまがチャンスかもしれない。敵が弱っているときに攻め落とすのは、兵法の基本なりよ。

 なんてね。いうはやすし、行うは難しだ。でも、歴史を見ると、いつもそうなんだよね。「そんなの無理に決まってるだろ」という人が必ずいて、それでも「やってやる!」って人がいて、そういう人が成功している。もちろん、失敗する人も多いけど……

 そして、「呪文を唱えよう!」に繋がる。オバマさんが唱えた呪文は、チェンジだった。日本も変わりたいよね。太郎くんみたいなのには、引退してもらってさ。

 というわけで、2008年のエッセイを締めくくろう。みなさん、良いお年を。


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