久しぶりに再会してみれば……


 ああ、これだよ、これ! すばらしい!

 じつはいま、このエッセイをWZエディターの体験版で書いている。過去のエッセイをお読みの方で覚えている人もいるかも知れないが、ぼくはWZエディターをとても気に入っていて、おそらく作品の7割ぐらいを、WZエディターで書いているはずだ。ぼくにとって、最も重要な常用ソフトだった。

 だった……?

 そう。過去形なのだ。WZエディターとは別れた。以前エッセイに書いたとおり、パソコンを買い換えて、OSがWindows XP から、Windows Vista に変わったとき、WZエディターがマトモに動かなくなってしまったのだよ。そこでぼくは、泣く泣くWZエディターと別れ、秀丸エディターと、新たな道を歩む決心をした。

 それから1年……

 ふらりとWZエディターが帰って来たのだ! なんと5年ぶりのバージョンアップなのだそうだ。

 という情報を、うちの掲示板で教えていただいて、いまWZエディターの体験版でこれを書いている。

 教えてくださった方は、この5年ぶりのバージョンアップを「別れた恋人が今更気のある素振りをしている」と表現なさった。なるほど、そうかもしれないと思ったのだが……もしかしたら、事態はもっと深刻かも。

 むかしCast Away(キャスト・アウェイ)という映画があった。主演のトム・ハンクが、飛行機事故で無人島に流され、そこで4年間もサバイバル生活をする話だ。要するに、現代のロビンソンクルーソーだな。

 映画の主要な部分は、無人島で必死に生きようとするトム・ハンクスの奮闘ぶりなんだけど、この映画のハイライトは、4年ぶりに救出されたあとだ。恋人のヘレン・ハントは、トムが死んだと思って、別の男性と結婚し、新しい人生を歩んでいたのだ。

 その二人の再会が、この映画のハイライトだ。雨が降る中、トムとヘレンはずぶ濡れになりながら、過去に愛し合った相手に、いまも愛していると情熱的なキスをするのだが……やはり別れて、新しい別々の人生を歩んでいく。

 なんで、こんな話をしたかというと、ぼくにとって、WZエディターは「死んだと思っていたソフトウエア」だからなんだ。

 だって、現代のソフトウエアが5年もバージョンアップしないなんて、死んだと同じじゃないか。開発元の株式会社ビレッジセンターに知り合いはいないので、どんな事情があったのか知らないけど、これを機に、株式会社ビレッジセンターのホームページを見ると、どうやら、組織的(おそらく経営的にも)に、かなりゴタゴタしていたようだ。

2006年03月 創業者中村満が退社。後任の代表取締役を草刈弘志とする
2007年11月 出版部門を休眠宣言
2007年12月 広告代理業を廃業宣言。元取締役営業部長 高橋知義経営の株式会社アドフィクスに営業譲渡
2008年04月 草刈弘志が退社。創業者中村満が代表取締役に復帰。同時にWZエディタ関連を、株式会社WZソフトウェアとして分離独立(敬称略)
※株式会社ビレッジセンターのWebページより転載(原文ママ)


 上記は、株式会社ビレッジセンターのホームページに掲載されている会社沿革だ。2006年に創業社長が退社し、翌年、出版部門を廃止。さらに広告代理店業も廃業している。そして、またまた社長が辞めちゃって、創業者が社長に復帰。

 常識的に考えて、これだけゴタゴタしている会社の事業が順風満帆とは思えない。ハッキリ申し上げると、経営的にヤバイと考えられる。しかも、WZエディター関連を、株式会社WZソフトウェアとして分離独立したところが気にかかる。もしかしたら、株式会社ビレッジセンターは、近いうちに、会社そのものを精算(倒産?)するつもりじゃないだろうか。だからWZエディターを、いまのうちに別会社にしておくのかもしれない。そんなことを想像させる。※注 ビレッジセンターについて

 ね、事態はかなり深刻そうでしょう?

 いや、いま書いたことは、ぼくの想像に過ぎない。でも、もしも、この想像が当たっているなら、WZエディターだけは、なんとか生き残るのだろう。それが唯一の救いというか、なんだか本当に「死んだと思っていたソフトウエア」が帰って来た気分だけど、問題は、それだっていつまで続くんだろうってことだ。

 不安だなあ……だって、株式会社WZソフトウェアが設立されて、すでに4ヶ月ほど経過しているはずなのに、そのホームページの会社概要には、いまだ会社の住所しか掲載されていないんだぜ。社長が誰で、資本金はいくらで、業務内容がなんなのか、サッパリわからない。大丈夫かよ。

 というわけで、帰って来たWZエディターは、なんだかゾンビみたいだ。生きてるんだか死んでるんだかわからない。生きていたとしても、またいつ死んじゃうかわからない……

 ああ、もう、なんかスッキリしないな!

 お願いだから、株式会社WZソフトウェアさん、もっと情報を出してくださいよ〜。あなたたちは、誰がなにをやってる会社なんですか?

 ぼくの大好きだったWZエディターを、また使えて大喜びしてしているはずなのに、なんで、こんなにイライラしているかと言うと、じつは、いま使っているWZエディターの体験版に深刻なバグがあるからなんだ。

 まだ体験版なんだから、動作が安定しないのは仕方ない。でも、ぼくの発見したバグは、とても深刻な気がしてならない。なんと、マウスのスクロールボタンが、正常に機能しないのだ。スクロールボタンのない、原始的なマウスしか付属していないマックユーザーにはわからないだろうが(ええ、Windowsの方が先進的だと言いたいんですよ。それでマックユーザーを怒らせたいんですよ(笑))、マウスのスクロールボタンは、とても便利だ。それをクルクルまわすだけで、長いWebページや、長いテキストなどを、上へ下へと、自由にスクロールできるのだから。

 ところが、WZエディターは、そのスクロールボタンを、どちらに回しても、下にしかスクロールしない。つまり、上に戻れないのだ。これは、スクロールボタンが、ぜんぜん機能しない状態よりストレスがたまる。

 まいったなあ。WZエディター5にも、スクロールボタン関係のバグがあったと記憶しているから、そのころから、スクロール関係のプログラムに、なにか問題を抱えているのかもしれない。

 それにしても深刻なのは、これほど大きい(だれにでも気づくという意味で)バグが放置されていることだ。おそらく、開発者のコンピューターでは、このバグは発生していないと思われる。だって、ホントに、こんなすごいバグ、だれだって気づくぜ。それを放置してるんだから、開発者は気づいていないと考えるのが妥当だ。(つまり開発者のPCでは同様のバグが発生していない)

 ということは、ぼくのPC環境特有のバグと言うことだよ。Windows Vistaで、Microsoftのワイヤレスマウスを使っていてる場合にだけ起こるのだろう。事実、ノートパソコンにもダウンロードしてみたけど、そちらでは、正常に動いているのだ。

 ああ……(ため息)。

 こういうバグが一番厄介だよね。ある「特定の条件」でしか発生しないバグは、なかなか直してもらえない気がしてならない。一応、謎の「株式会社WZソフトウェア」にWZエディターの不具合を報告する窓口があるので、そこへ報告はしておいたけど……いろいろ大変そうな会社だから、不安だなあ。※注 バグについて、2008年8月12日に追記

 なんて、ネガティブなことばかり書いているけど、このエッセイの冒頭で書いた言葉は嘘じゃない。そう、「ああ、これだよ、これ! すばらしい!」って、マジで思ったよ。秀丸エディターを、WXエディターと同じようにカスタマイズして使っているけど、やっぱり、違うんだよね。細かいところがさ。WZエディターは、なんて言うか、文字の表示のされ方とか、文字を打ち込んでいるときの動作とか、言葉では説明しづらい細かい部分が、ぼくのフィーリングにピッタリくるんだ。WZエディターを開発している人が誰だか知らないけど、たぶん、その人とぼくは、美的感覚が似てるんじゃないだろうか。そんな気がする。

 もちろん、WZエディターの売りは表示の美しさではなく、「アウトライン機能」だ。アウトライン機能も、バージョンアップにふさわしく、さらに便利になっている。以前のWZエディターでは、アウトラインに指定した行の文字を変えたいとき、本文を変更しなければならなかったけど、このバージョンからは、アウトライン側で変更できるようになった。これはすごく便利だ。なんで、もっと早くこうしてくれなかったのかと思うくらい。しかも、変更だけでなく、アウトライン側で新たに章などを作成できるようにもなっている。さらに、ドラッグ&ドロップで、見出しの入れ替えも出来る。すばらしい!

 こんなにステキなテキストエディターは、ほかにはないよ。秀丸エディターは、この分野では超有名で、おそらくシェアもナンバーワンだと思うけど、文章を書くためにテキストエディターを使っている人には、WZエディターの方が絶対にいい。と、ぼくは断言する。イヤ本当だって。長文を書く人は、アウトライン機能を使った方がいいよ。長文作成の効率が、すごく違うから。

 まだ、なんとなく不安定だけど(再現性がないバグにも、いくつか遭遇した)、いまのところ、再現性があり、かつ大きな問題だと感じるバグは、スクロールボタンだけだ。これが製品版までに直ってくれれば、ぼくは間違いなく、WZエディターに戻る。また開発が停止されるんじゃないかという不安があっても、ふたたびWZエディターで、作品を生み出していきたい!

 それもこれも、スクロールボタンのバグが直ればだ。スクロールボタンが機能しないのは、あまりにも大きすぎるバグなので、これが直らない限りは、どれほどほかの機能が優れていても、どれほど表示が美しくても、常用ソフトにはならない。

 でもでも、もしも製品版で直らなかったら……?

 うーむ。うーむ。そんときは、マウスの方を変えてやる! ノートパソコンでは、Logicoolのワイヤレスマウスを使ってるけど、そっちは問題なく動いてるんだ。そうだ、そうだよ。マイクロソフトのインテリマウスなんか捨ててやる!

 あ、スクロールボタンのない、原始的なマウスしか知らないマックユーザーにはわからない悩みだろうけどね。なに? サードパーティーのスクロールボタン付きマウスに変えて使ってるって? それは瀟洒ですな。でも、そもそも、マックにはWZエディターがないじゃん。ははは。いいなあ、マックユーザーは、原始的で(苦笑)。

 いや、別にマックユーザーに恨みはないんだけど、せっかく新しいWZエディターが出たのに、またマトモに使えないことの憤りを、だれかにぶつけたくてつい(苦笑)。すいません、マックユーザーのみなさま。怒らないでね。マックにも「Jedit」って、いいエディターがあるもんね。むかしマックユーザーだったころ、ぼくもJeditには、ずいぶんお世話になったもんだよ。WZエディターには、遠く及ばないけどさ!(また怒りを買うようなことを……)

 以上、非常に趣味性の高い……というか、興味のある人が、非常に少ないと思われるエッセイはこれで終わり〜。

 最後に、WZエディターのバージョンアップを教えてくださった mold さんに感謝! おかげさまで、ぼくはマウスを買い換えることになりそうです(笑)。


※注 バグについて、2008年8月12日追記
不具合を報告した翌日には、サポート側でバグが再現しない旨の連絡をいただいた。そこで原因を探るため、デバッグモードでWZエディターを動かし、デバッグモードが表示する(ぼくにとっては意味不明な)文字列をサポートにお知らせしたところ、見事にバグが解消された。すばらしい!

いままで、いろんな会社のソフトウエアでバグを見つけては報告をしてきたけど、電話口のオネーさんに「開発部門に伝えておきます」と言われるだけだった。それが、WZエディターでは、こんなに迅速にバグを直していただいて、なんだかちょっと感動。小さい会社(失礼!)は、小回りが利くね。

追伸
mold さん。マウスを買い換えなくてすみましたよ(笑)。


※注 ビレッジセンターについて 2010年3月24日 追記
ビレッジセンターは、このエッセイを執筆した約三ヶ月後の、2008年11月19日に、解散することを発表した。ぼくの予想は的中したわけだ。べつにうれしくないけど……

それに伴い、やっと更新された株式会社WZソフトウェアのホームページによると、ビレッジセンターの社長であった中村 満氏が、株式会社WZソフトウェアの社長になったようだ。しかし、株式会社WZソフトウェアの業務内容が不思議。ソフトウエア開発ではなく「出版業」だって。エディターの開発は、出版なのかね? そういえば、たしかビレッジセンターにも「出版」部門があった。中村さんは、出版が好きなのかもしれないね。



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