SoftBankの謎


 お久しぶりでございます。みなさまお元気でしょうか。ぼくはまあ、お腹に溜まった脂肪を恨めしく思いながら、相変わらずパソコンの前で、ぽちぽちキーボードを叩いております。

 おりますが……正直に言うと3月は、あまり書けなかった。今年は花粉症がひどくて、花粉のシーズンは脳みそがお休みしてたのだ。

 で、4月も半ばになってから、やっとエンジンがかかってきたんだけど、3月と4月上旬がそんな調子だったので、つぎに出すケータイゲームのシナリオが遅れていて、ここ最近は、それに没頭してました。というか、じつはいまも書いてます。つぎのケータイゲームも、よりよいモノしようと奮闘中です。

 本当はね、もっとエッセイを書きたいんだよ……なんて言うと、無料の新作こそ、もっと書けという声とともに、座布団が飛んできそうだな(苦笑)。でも、ぼくの身体(脳みそと言うべき?)は一つしかないから、できることは限られているのだ。期待して待ってくれているみんな、ごめんね。

 そうだ。無料で思い出したので、さっそく脱線しちゃう。ぼくの彼女は、たまにカップケーキを焼いてくれるんだ。もちろん無料だ。お金を取られたことは一度もない。ところが先日、「原材料高騰のためしばらく休業します」と言われたよ(苦笑)。おもしろいこというジャンと笑ったけど、たしかに手作りのカップケーキだって無料ではないのだ。こんな身近なところで、小麦粉とバターの値上がりの影響を受けるとは……

 ちなみに、脱線ついでに暴露しちゃおう(ひひひ)。彼女の焼くケーキには、いつもなんらかの注意書きがついている。原材料高騰のため休業する直前のカップケーキは、「ベーキングパウダーを入れ忘れました」だった。

 ベーキングパウダーには、ケーキをふっくら膨らませる作用があるらしく、そういうモノは入れ忘れちゃマズイんじゃないかと思うわけだが、彼女曰く、どうなるか不安だったけど、卵のおかげで膨らんだから、ちゃんと食べられますとのこと。ベーキングパウダーなしでも、カップケーキが焼けることを彼女は証明したらしいけど……べつに証明しなくてもいいと思った。とくに、ぼくが食べるケーキでは(苦笑)。

 あと、「チョコケーキを作りたくて、冷蔵庫に余っていたチョコを使ったら、そのチョコになにか入っていて、それが溶けなかった」というのもあったな。「チョコになにか入っていた」というのがデインジャラスでいい感じ(苦笑)。これまた彼女曰く、混入物は食べられないモノじゃないから、なにか入っていたら、それは「当たり」ですだって。相変わらずおもしろいことをおっしゃるが……そんなことでクジ運を使いたくないので、べつに当たらなくていいと思った。幸いにも当たらなかったが(笑)。

 失礼。脱線しすぎた。

 マジメな話、エネルギーと食料がダブルで値上がりしているんだから、世の中のいろんなモノが値上がりするのは、当然と言えば当然だ。店長をこき使って単価を下げてきたマクドナルドだって、いつまでも100円メニューを続けるわけにはいかないだろう。ちゃんと社員に利益を還元しないと、尊敬される会社にはなりませんぜ、原田社長。

 以上、脱線終わり。そろそろ本題に入ろう。今回はSoftBank(以下ソフトバンクと表記)の、料金体系ついて考えてみたい。

 じつは、つい最近ソフトバンクのケータイを買った。もちろん買っただけではなく、通話とデータ通信を使うための契約もした。目的は「召しませMoney!」のソフトバンク版をプレイするためなんだ。いままでぼくは、ドコモとauのケータイを使ってきたので、この2社についてはなじみがある。だけどソフトバンクは、かつてのJフォン時代から使ったことが一度もない。

 だから、どんな機種があって、どのくらいの値段で、どんな料金プランなのかを、ほとんど知らなかった。白い犬のお父さんが出てくるコマーシャルは目にしていたから、ホワイトプランというのがある……ぐらいの知識しかないんだよね。

 そこで、調査をせねばなるまいと思い、ソフトバンクのホームページを見た。いやはや、これがもう、はじめて接する者にとっては、ほとんど迷路。いったい、どんな料金体系なのかサッパリ理解できない。とくに新スーパーボーナスという制度がわからない。ドコモやauにはない販売方式というより、概念に近い感じ(大げさだけど)。概念というのは、わかってしまえば「なーんだ」となるんだけど、わからないときは、トコトンわからないのだ。

 うーん。さすが孫さんの会社だ。あの人、頭がバツグンにいいんだろうから、お客も頭がよくないと理解できないようになっているらしい。なんて皮肉を書きたい気分(というか書きました)。

 そこで、ソフトバンクショップに行って聞いてみることにした。街のケータイショップか量販店のケータイ売り場で聞ければ手軽なんだけど、ああいうところの店員さんって、質問に答えてくれないんだよね。最近の料金体系は複雑すぎて、細かいことは覚えられないらしい。

 というわけで、ソフトバンクショップに出かけていった。さすがにソフトバンクショップの人なら、自分が売っているケータイの料金体系を熟知していて、どんな質問にも答えてくれるだろう……と思ったけど、残念ながらそうではなかった。ソフトバンクショップのオネーさんでさえ、新スーパーボーナスの正しい説明はできなかったのだ。幸い、信用していなかった量販店の売り場に詳しい店員さんがいて、やっと理解することができたのだけど……理解したあとも、なんだか不思議な制度なんだ。

 結論から書こう。新スーパーボーナスというのは、携帯電話(端末)の代金を、ソフトバンクが補填する制度だ。その補填額は端末の販売価格によって違う。たとえば7万円くらいの高価な端末なら、補填も4万円くらいと高い。これが3万円の端末だと、補填は2万円ぐらいに下がる……という具合だ。端末が安ければ、補填額も安くなるのは当然だから、複雑ではあっても不思議ではない。

 この制度を不思議にしている要因は、その補填が一括では行われず、最長2年(24回)という期間をかけて、毎月分割で行われることだ。さらに厄介なのが、この補填は単純なペイバックではなくて、ケータイの使用料から「割引」という形で行われるところ。

 つまり、いま仮に毎月の補填が2,100円あったとしよう。そして基本使用料を含め、4,000円分利用したとすると、4000-2100=1900で、その月の支払いは1,900円になる。

 この「割引」というのがミソだ。あくまでも割引だから、使用料を超えては支払われない。もし月の利用料が980円だったら、補填は980円までしか行われないのだ。結果として、支払額は0円になるけど、補填額を超えた分の1,120円を現金でもらえるわけじゃない。

 これのどこが不思議なのかって?

 いや……べつに不思議じゃないかもしれない。とくに、高価な端末を分割で買う人にとって、新スーパーボーナスという制度は、なんの不思議もないはずだ。むしろ、このアイデアを思いついた人を褒めたいくらいだよ。

 考えてみよう。たとえば7万円の端末を、24回払いで買ったとしよう。その人は、24回に渡って端末の月賦を、毎月3,000円ほど払わなくてはいけないが、同時にソフトバンクから2,100円分補填してもらえる。ところが、もしも途中で解約しようと思ったら、月賦は毎月払わなくちゃいけないのに、補填はなくなってしまうのだ!

 え〜っ、そんなのヤダぁ〜。と普通は思うだろう。

 要するに、ソフトバンクは、2年間その端末(とソフトバンク)を使いなさいと言っているわけなのだ。いままではユーザーからは見えにくかった販売報奨金を、もっともエレガントに目に見える形にしただけでなく、その効果で、ユーザーを2年間ソフトバンクに縛り付けるのだから、新スーパーボーナスを考えた人は頭がいい。

 このように理解が進むと、複雑でわかりにくいと思っていた新スーパーボーナスは、じつはフェア(公正)な制度なのだと気づく。たしかに月賦と補填金で、実質的に2年の縛りがあるけれども、2年経てばユーザーは自由の身だ。ドコモとauにも、2年間の契約で基本料金を割り引く制度があるが、これらは途中解約すると、最高で2万円弱の違約金を支払わなければならず、しかも2年の刑期が終わっても、自動的に、また2年の刑期が課される無限地獄になっている。要するに終身刑だ。仮釈放のない終身刑は、死刑より辛いと言った人がいるが、ドコモとauの制度は、まさにそうなっている。わかりやすくはあるが醜いのだ。一見複雑に見えるソフトバンクの方が、じつは美しい。

 ところがだ。

 分割ではなく一括で、しかも安い端末を買う場合、この新スーパーボーナスは、なんか不思議なことになってくるのだよ。じつはぼくが、その不思議な買い方をした。

 具体的に話そう。買ったのは820Pという機種だ。多くの量販店では3万円程度で売られている端末で、この販売価格だと、毎月の補填額は1,000円になる(ちなみに1,000円が補填の最低金額のようだ)。

 さあ、ここで問題。

 ぼくはいま820Pの値段は、約3万円と書いた。ところが、期間限定で、14,800円のプライスを付けている量販店を見つけてしまったのだ。

 14,800円だって? マジですか?

 さあ大変だ。こうなると新スーパーボーナスという制度が、まるで狐につままれたようなモノになってしまう。だって、補填額は毎月1,000円の2年間(24回)だぜ。要するに24,000円だ。ということは……

 補填額が、端末の販売価格を上回ってしまうではないか!

 計算してみよう(するまでもないけど)。1000×24は、24000だから、24000-14800=9200。ということになる。くどいようだけど、端末の値段が9,200円になるんじゃないよ。ソフトバンクが9,200円くれるって言ってるんだぜ。この世に、タダより安いものはないと思っていたが、それは間違いだった。ソフトバンクのケータイはタダよりさらに安いのだ(苦笑)。

 あのう〜、孫さん。本当に9,200円くれるんですか? マジで、こんな詐欺みたいな話があるんですか? しかも、ぼくが購入したとき(いまもやっているようだが)、端末購入者には、もれなく、5,000円の商品券をプレゼントしてくれるキャンペーンをやっていて、それを差し引くと、端末価格は9,800円になってしまう。2年間の補填額合計から、この端末価格を引くと、14,200円ですぜ。

 よろしいですか、みなさん。またまた、くどいようだけど、この14,200円は、ぼくがソフトバンクに支払うお金ではなくて、ソフトバンクが、ぼくに支払うお金なんですよ。マジ? まだ信じられないんですけど……

 さあ、どうだ。みんなも頭が混乱してきただろ?(笑)。

 いままでも1円で端末を手に入れたことはあった。けどそれは、たとえ1円だろうと、あくまでも、ぼく(お客が)お金を払うという、ある意味自然な形を崩してはいなかった。ところがソフトバンクは、14,200円くれると言うんだから驚きじゃないか。

 もちろん、その場で現金を渡されるわけではない。さっき書いたとおり、この14,200円は2年間かけて(正確には24回と言うべきだが)、毎月の「割引」という形で還元される。

 では、ぼくの毎月の支払額はいくらになるのだろう? 計算してみよう。まず現在の、ぼくの契約を具体的に書くと以下のようになる。

ホワイトプラン S!ベーシックパック(※1) パケットし放題 合計
980円 315円 1,029円 2,324円
※1 S!ベーシックパックとは、ドコモで言うiモード使用料で、これに入らないとゲームはダウンロードできない。

 以上の金額に、毎月の補填1,000円を引くので、支払額は2324-1000で、1,324円ということになる。

 もっとも、パケットし放題の1,029円は最低チャージだ。本気でパケットし放題をやってしまったら(ゲームをばんばんダウンロードするとか)、パケ代は上限額の4,410円まで跳ね上がる。つまり、もっとも支払額が多い月は、(980円+315円+4,410円)-1000円=4,705円。となるわけだ。

 逆に、ゲームをダウンロードする必要のない月は、S!ベーシックパック(315円)と、パケットし放題の最低チャージ1,029円を支払う必要がないので、これらの料金を外せる。すると、その月の支払額は、ホワイトプランの980円だけだから、980-1000=-20円なので……

 さあ、みんな。驚く準備をしてくれ。ぼくの支払額は0円になってしまうのだ!

 正確には端末の購入に14,800円(5,000円の商品券分を引くと9,800円)かかっているので、この9,800円を24分割した、約408円が維持費だ。いや……話が複雑になるので最初は書かなかったけど、もっともっと正確に記すなら、端末の購入代金14,800円には、某量販店のポイント還元が10%つくのだよ。だから実質的には13,320円であり、ここから5,000円(商品券)を引くと、それは8,320円。こいつを24分割すると約347円。この数字が、もっとも正確な最低維持費となる。(端末は一括で購入したので、ソフトバンクから月賦を請求されるわけではないが)

 安いよなあ。347円だぜ。タバコを吸ってるときは、半日で消費してた金額だ。みんな、この不思議さが理解できる?

 ぼくの場合は、偶然にも安い端末を見つけ、また通話をまったくせず、ゲームのテストプレイのためだけにケータイを維持するという、非常に特殊な環境だから、こういう計算になるのだけど、そういう事情を差し引いても安いと思う。ドコモやauでは、どうがんばっても、こんな値段にはならないのだ。

 それにしてもなあ、いくらぼくの環境が特殊とはいえ、こんなことやっていて、ソフトバンクは利益が出るのだろうかと、株主でもないのに心配しちゃうよ(いや、心配する必要はない。今期は最高益なんだそうだよ)。そもそも、白い犬のお父さんが宣伝している「ホワイトプラン」というのがすごいじゃないか。

 これは毎月980円の基本料金でケータイが持てるプランだ。ドコモやauによくある「無料通話」はついていない。通話をすれば、した分の通話料が加算される。わかりやすくてよろしい。ただし、ソフトバンク同士なら、夜の9時までは、通話料が無料だ。そして、夜中の1時を過ぎれば、また通話が無料になる。

 まったく、よく考えたモノだね。ソフトバンクはユーザー数が少ないから、通話は他社へかけることが多くなるはずだ。他社へかければ無料じゃないから、ソフトバンクにちゃんとお金が入るというカラクリ。

 でも……ちょっと考えてみればわかることだけど、もしもソフトバンクが、どんどんユーザーを増やしていって、いまのドコモのように、シェア50%になったとしたら、かける相手はソフトバンクが多くなり、その場合、無料通話を続けていたら、おそらく赤字になるだろう。つまり、ホワイトプランは、ソフトバンクが大きくなれば、いつかは廃止される運命にある。

 ところがだ。当のソフトバンクは、通話よりもデータ通信で儲ければ、会社が大きくなっても、象徴的なホワイトプランをやめなくてもいい……と考えているようだ。

 うーん。どうなんだろうねえ。頭のいい人たちがそう言ってるのだから、そうなのかも知れないが、ぼくは天の邪鬼だから、そんなことができるとは思えないな。孫さんは最初、他社が料金を下げたら24時間以内に追従し、かつ他社より100円は安くすると大々的に公言して話題をさらった。なのに、つい最近、「それやめました」と大々的に……ではなく、すごく小さな声で(要するに一般の人にはわからないように)告知していた。

 都合の悪いことはしゃべりたくない……というのが、人間の心理だと言えばそれまでだけど、ぼくは孫さんにクリーンなイメージを抱いていて、日本の経営者の中では、かなり好きな人物なんだ。その孫さんでさえ、営業に不利だと思うことは、小さな字や小さな声になってしまうのだから、困ったもんだ。この分じゃ、ホワイトプランも、ひっそりやめようとするんじゃないかな。(やめるなと言ってるわけじゃないよ。堂々と説明すればいいのにと言ってるんだ)

 おっと、話が少し飛躍した。

 未来はどうあれ、いまのソフトバンクは、2台目のケータイとして持つには、もっとも維持費の安いキャリア(通信会社)だ。それこそが、ケータイ業界で最下位からスタートしたソフトバンクを支えてきた戦略のはずで、孫さんは一人でも多くユーザーを増やしたい……はずだろうけど、ぼくのようなユーザーはイヤだろうな。ソフトバンクにとって、薔薇に付くアブラムシみたいなものだろう。でも解約してあげない。これから2年間、毎月ありがたく1,000円いただきながら、ソフトバンクを使わせていただきます(笑)。

 というのは半分本気の冗談だけど(笑)、値段というわかりやすい恩恵がなくなっても、そのときは、さらに魅力的な会社になっていて、ぼくもソフトバンクに、もっともっとお金を落としているかもしれない。孫さんが率いるソフトバンクには、そんな力を感じる。こんなところでお世辞を言ってもなんにも出ないから、お世辞じゃなく本当にそう思います。

 とくに、今年の秋からはおもしろそうですぜ。ドコモがロゴとコーポレートカラーを変えてまで経営方針を転換するからね。彼らは既存の顧客維持を最重要課題とするそうだ。そう、ついに守りに入るってわけ。トップシェアの企業が守りに入ったら、下位の企業にはチャンス到来。2位のauだって、ドコモとソフトバンクの客を奪おうと狙ってるだろうし、まだしばらくは、ケータイ業界から目が離せませんな。

 でもね孫さん……だからって言うわけじゃないけど、ネガティブなことも、ちゃんと伝えてくださいね。小さな声や、小さな字じゃなく、キチンとわかりやすく。そして、できることなら、料金プランを、もっとシンプルにしてくださいな。24時間以内の他社への追従をやめたんだから、もうブループランやオレンジプランはいらないでしょ?

 以上、ソフトバンクのユーザーになったばかりの天の邪鬼から、ささやかなお願いをしたところで、今回のエッセイは終了です。いつものことだけど、お粗末さま。


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