今年はいろいろありました


 今年もいよいよ終わりだね。やっと休みに入ってホッとしている人も、ホッとする間もなく、大掃除と帰郷の準備に追われている人も、それどころか、年末年始も仕事だという人も、とにかく、みんなお疲れさま。

 そういうぼくも、今年の仕事はすべて終わった。来年早々に、某家電メーカーのタイアップ広告を撮らなきゃいけなくて、その打ち合わせが最後の仕事だった。難しい撮影になりそうで、いまから気が重いけど、来年のことは来年の自分に心配させよう……と、思うのだけど、今年のうちに準備しておくことが一つだけある。

 じつは、打ち合わせの後、ノートパソコンを買った。デスクトップの方がなにかと快適に作業できるから、ここしばらくノートパソコンは持っていなかったのだけど、さっき話した来年早々の仕事で、どうしても必要なのだ。撮影の現場で、撮影したばかりの画像を取り込み、クライアントに対して、簡単なプレゼンテーションをしなくちゃいけないんだよ。だからノートパソコンが必要で、さらに、いろいろアプリケーションも入れておかなくちゃいけない。こういう面倒な作業は、今年の内に済ませておきたいのだ。

 やれやれ。それにしても、クリスマスに続き、また出費だぜ。

 で、いまこのエッセイも、そのノートパソコンで書いている。今年は召しませMoney!を筆頭に、いくつかの作品を売り出し、さらにゲームにまで進出。でもそれは始まりに過ぎないのだ。来年はさらに多くの作品を発表したい。そのためには、いつでもどこでも誰とでも……いや、誰とでもは余計だな。いつでもどこでも、執筆活動に打ち込めるように、ノートパソコンは必需品なのだ!

 うん。そう思うことにして、この出費を正当化しよう。そういえば少し前の朝日新聞に、人間の脳に関する最新の研究が紹介されていた。それによると、人間は行動するときに、意外となにも考えていないらしく、行動してしまってから、その理由を考え、自分で自分を納得させるらしいんだ。

 うーむ……じつに説得力のある研究結果だ(苦笑)。

 まあ、ノートパソコンがほしいと思っていたのは本当だから、自分を納得させるのはわりと簡単だったけど、パソコンのセットアップをはじめてみると、げんなりしてきた。

 今年はデスクトップも新しくしたから、パソコンのセットアップは、これで二回目だ。ぼくは、OSの再インストールのつぎに、パソコンのセットアップが嫌いだ。とにかく、最近のWindowsは、使えるようになるまでが長い。かなりの量のアップデータ存在するので、それをダウンロードして、さらにインストールして、例によって再起動が何度かある。

 しかも、アップデータが存在するのはOSだけではなくて、使っているアプリケーションも、ほぼすべてと言っていい確率でアップデータが存在するから、CDやDVDから元のプログラムをインストールした後に、やっぱりアップデータをダウンロードして、それをインストールして、場合によっては、再起動を求められる。これらの作業は、だいぶ自動化されて、楽にはなってきているけど、辛気くさい作業なのに変わりはない。

 この辛気くさい作業から解放されるには、OSもアプリケーションも、ネットのどこかに置いてあって、誰かに管理してもらうしかない。ぼくらは、それをネット経由で使わせてもらう。だから、自分のパソコンにはデータしか存在しない……という方法しかないだろう。

 でもさ、それってイヤだよね。なんか近未来の管理社会みたいで。だから、文句を言いながらも、自分のことは自分でやるしかないんだ。

 おっと、ごめん。このエッセイは、今年一年を締めくくるつもりで書き始めたんだ。べつにパソコンのことで愚痴りたいわけじゃない。

 ただね。パソコンのセットアップが嫌いなのは本当のことで、そのことで今年は、思い出深い経験をした。覚えてるかな? 今年は、ついにというか、とうとう召しませMoney!の続編である、モネの誘惑を書き上げた、記念すべき年なんだ。

 なにを大げさなと思われるかもしれないけど、ぼくの中では、本当にモネの誘惑を完成させたことが、いろんな意味で、思い出深い。

 まずは、「Windows Vistaの誘惑」と題したエッセイでも書いたとおり、モネの誘惑は、以前使っていた、自作PC(通称ケイト)で書き上げた、最後の小説になったことが、感慨深い。

 Windows Vistaの誘惑に詳しく書いたけど、ケイトはずっと調子が悪かった。ところが、ぼくの方はケイトとは逆に絶好調。連日連夜、キーボードに置いた指が、嘘のようになめらかに動いて、モネの誘惑を、じゃんじゃん書き進んでいた。あの長編を、まったくのゼロから三ヶ月で完成させたといえば、どれだけ好調だったか、わかってもらえると思う。

 なのに、ケイトは調子が悪い。起動さえしてしまえば大丈夫なんだけど、その起動をさせられないんだから、話にならない。毎日、ケイトのスイッチを押すのはドキドキする経験だった。もし、完全に故障して起動しなくなったら……と、本当に毎日、気が気じゃなかったよ。

 だったら、さっさと、新しいパソコンを買いなさいよ。なんて、怒られそうだけど、さっき話したとおり、パソコンのセットアップは嫌いなんだ。丸一日とはいわないまでも、半日は確実につぶれる。そんなことに時間を浪費するより、一分でも長く、モネの誘惑を書いていたかったんだ。それに、新しいパソコンになると、日本語変換の効率が、微妙に変化する。登録単語を移植すれば問題ないと思うだろ? たしかにそうなんだけど、でも微妙に違うんだ。文節の区切りとかまで、完ぺきには再現されないからね。こういうエッセイを書いているだけなら、ほとんど感じないけど、小説を書いていると、そういった違いが気になってしまうんだ。

 というわけで、ケイトの調子が、いよいよ末期と思えるほど悪化した六月中旬から、モネの誘惑が完成するまでの、十日間ほどが、本当に大変だった。ケイトなんて擬人化して呼んでるけど、正直いって、ケイトになにか思い入れがあるわけじゃない。時間と暇と、パソコンのセットアップが嫌いじゃなかったら、とうの昔に捨てていただろう。べつに機械を愛でる趣味はないんだ。

 なのに、モネの誘惑を書き上げたときは、ケイトに対して、「お疲れさま。よく頑張ってくれたね」なんて気持ちになったよ(笑)。

 というのが、今年一番思い出に残っていることなんだ。もちろん、Script1の重大ニュースという意味では、作品を有料にしたことが、もっとも大きな出来事だったとは思う。みなさんのショックも大きかっただろう。でも、ぼく自身の中では、モネの誘惑を完成させたことが、いちばん大きかった。苦労して書き上げた喜びの余韻に浸る間もなく、大嫌いなパソコンのセットアップに明け暮れなきゃいけなかったんだから、そりゃ思い出にもなるさ(笑)。

 それにしても、今年は召しませMoney!をたくさん書いた。モネの誘惑が終わって少ししたら、こんどはケータイゲームシナリオの執筆。こちらは心機一転、新しいGatewayくんで書き上げた。まさに、召しませMoney!に始まり、召しませMoney!で終わった年だね。

 いや……本当のこというと、Blind Chordの短編を書き上げて終わりたかったんだけど、無理だったね。期待してくださっているみなさん、ごめんなさい。来年の早い時期に書き上げて、サーパラさんから配信しますから、もうちょっと待っててくださいね。

 来年のことが出たついでだ。まだ公式ではないけど、非公式に発表しよう。来年には、モネの誘惑もケータイゲームになります。こちらも期待していてください。そしてそのあと、たぶん来年中(ごめん。時期はまだ未定)に、ケータイゲームのために、一本シナリオを書き下ろします。すでに制作元には「あらすじ」を提出してあって、けっこう好評なんだ。自分でいうのも何だけど、きっと、おもしろいゲームになると思う。召しませをゲームにする作業のおかげで、だいぶコツもつかんだしね。

 そんなわけで、来年も書かなきゃいけない作品が目白押しなのだ。いやはや、作品を有料化してから休む間もないよ(笑)。そもそも有料化の目的は、モチベーションの維持だったわけで、いまの状況は、まさに願ったりかなったりというところだね。

 はい。この調子で、来年もがんばりますよ。なにせ、作品が売れてるってことは、ぼくの作品を読みたいと思ってくれている人が、本当に存在していることの証だからね。マジでやる気が出ます。買ったばかりのノートパソコンにも、写真の仕事用のアプリケーションだけでなく、ちゃんと、執筆用のソフトを入れて、しかも、ぼくの手になじんだ状態にセットアップしましたとも!

 さあ、準備は万端。これで年が越せる。

 みなさん、今年も……いや、今年こそ、本当に本当にありがとう。たくさんの方が小説を買ってくださって、たくさんの勇気をもらいました。来年は、ぼくたち、みーんなにとって、より一層よい年でありますように!

 よし、終わり。

 じゃあ、明日こそ(もう今日だ)大掃除します。嘘じゃないです。本当に大掃除します。しますってば(←だれに言ってるんだか(笑))。


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