本エッセイを始める前に一言。

 前回のエッセイ「戦争」は、アメリカのイラク攻撃が始まる直前に書いた。そして現在(2003/03/24)、イラクでは戦闘が行われている。世界中のほとんどの人々と同じく、ぼくもこの事実に無関心ではいられないが、いまはまだ、戦争を語るための情報も、心の準備もない。

 というわけで、今回は通常営業のエッセイです。ブッシュ大統領にもフセイン大統領にも負けず、いつもどおりいってみよう。




Japanistおまえもか



 ぼくのエッセイをお読みのみなさんの中には、ぼくが、日本語変換にJapanistというソフトを使っているのを覚えておられる方もいらっしゃるでしょう。そのJapanistが、2002から2003へとバージョンアップしました。最近一太郎もバージョンアップしたばっかりなのに(七千円ほどの出費)、Japanistおまえもかって気分ですよ。

 思えば、「わたしはジャパニスト」と題したエッセイを書いたときは、大きな反響がありましたね。数万件の問い合わせがあり、数千人がJapanistユーザーになったのです。

 うそです(笑)。

 えー、まあ、上の数字は大嘘ですが、何人かの方が、掲示板に「Japanist」で検索したら、うちのサイトにたどり着いたと書き込んでくださったし、推定約一名の方が、Japanistユーザーになったのは事実です。この、きわめて影響力の強い(笑)エッセイを書いた手前、わたくしTERUが、「もったいないから、やめときなさい」という理性の声を無視して、Japanistをバージョンアップするのは、もはや義務とさえいえるでしょう。またまた四千円弱の出費でございます。要は好きなんですな(笑)。

 というわけで、新しいバージョンで、いったいなにがどう変わったのか。2002を使っている人が、バージョンアップする価値はあるのか。そのあたりをレポートしてみましょう。

 まずはインストールから説明しましょうか。といっても、ただ C D をセットするだけです。適当に「次へ」ボタンを押していくだけで、以前の2002の辞書や設定を引き継いだ形でセットアップできます(もしも、引き継ぎたくない項目があるのなら、セットアップの途中で外せます)。

 が……

 Japanist2002でキー定義までカスタマイズしていた人は注意が必要です。なんと、キー定義は引き継いでくれないんです。ぼくは、けっこう時間をかけてATOKふうに変えていたのですが、その設定が、ぜーんぶ消えました(涙)。

 幸い、Japanist2003のインストーラーは、Japanist2002をアンインストールする機能がありません。2003をセットアップした後も、まだ2002が残っていました。おかげで、どのキーをどう変更したかを確認できましたので、再設定は比較的楽でしたけど……ちょっと腹立たしい。

 さらに言うと、登録した辞書は引き継いでくれますが、学習した文節の情報や、漢字ではなくひらがなで使用していた言葉などは引き継がれません。ぼくは、一人称の呼び方を、「ぼく」とか「わたし」というように、ひらがなにしてるんですけど、Japanist2003をインストールした直後は、「僕」「私」になっちゃいます。せっかく手になじんできた変換が、デフォルトに戻されて、また一からやり直しだよって感じ。Japanistのインストーラーには、改善の余地がたくさんありますな。はっきり言って、ATOKのほうが優れてます。一太郎のバージョンアップに合わせて、ATOKもバージョンアップしたんですが、ATOKの環境移行は、ほぼ完ぺきでした。文節の学習もちゃんと反映してましたよ。(それでもATOKを使わない理由があるのですが)

 いきなりケチがつきましたが、気を取り直して、Japanist2003の新機能を見ていきましょう。まず、今回のバージョンアップのもっとも大きな理由は、おそらく、Tablet PCへの対応だと思われます。Japanist2003のパッケージにも、でかでかと書いてある。その話をする前に、Tablet PCってなに? という人のためにごくごく簡単に説明すると、Tablet PCというのは、通常マウスで操作する部分を、液晶画面のタップで操作できるようにしたWindowsマシンのことです。銀行のATMみたいなもんですな。ただ、ATMは人間の指でオッケイですけど、Tablet PCは、専用のペンを使います(指でもタップできるかもしれないけど、触ったことないから知らない)。

 さて。Tablet PCで必要ないのは、マウスだけではありません。なんとキーボードも必要ない。いや、マウスもキーボードも使いたければ使えるようですけど、液晶だけのパネルのような形状になったPCを、ペンで使うのがTablet PCの正しい姿なのだと思われます。たぶん。

 となると、日本語変換も、ペンでの手書き入力に対応せねばなりますまい。Japanistは、対応したわけです。だから、手書き入力をしたいときは、下の図のような画面が出る。


 この、「自由に書いてください」ってところに、手書きで文字を書いていくと、それがどんどん、認識されていくっていう寸法です。ためしにマウスで下手くそな字を書いてみましたが、かなり認識率は高いです。Tablet PCでペンを使えば、そんなにストレスを感じることなく、文字入力ができるような気がしますね。でもね、気がするだけですよ。ぼくはTablet PCを持ってないので、本当のところはどうだかわかりません。もちろんTablet PCを使わない人は、上の画面を出さないように設定できます。

 では、Tablet PCを使わない人(ぼくだ)は、Japanistをバージョンアップする必要はないのでしょうか。答えはイエスです。以前のJapanist2002で十分でございます。お金を無駄に使っちゃいけません。

 では、このエッセイは終わり。みなさんご機嫌よう。また来年、Japanist2004が発売されたら、お会いしましょう。さようなら。

 じゃなくて!

 えーっと、ここで終わっては身も蓋もございませんから、無理やりエッセイを続けましょう。ここから先は、ごくごく少数のJapanistユーザーのみなさま。さらにその中にあって、バージョンアップ希望者のみなさまを対象にした、いままでで、もっともマイノリティーのためのエッセイです。読者は、推定二人ぐらいかな(笑)。

 さて。日本語変換ソフトの最高峰、ジャストシステムが誇るATOKにあって、Japanistに欠けていた機能はなにか。それは、類義語や単語の使い分けに対するヒント表示がされないことでした。

 しかーし! Script1をお読みのJapanistユーザー(推定一名)のみなさま! もう安心です。Japanistにも類義語のヒント表示がサポートされました。変換中にこんな画面が出ます。


 どーですか。イカスじゃないですか。たまに、この単語はどんなふうに使うのかなあって悩むことあるでしょ。そんなとき、このヒント表示が、あなたの悩みを即刻解決。間違いのない文章作成をサポートしてくれます。たとえば、冷房は「効き」すぎちゃいけませんが、機転は「利か」なきゃいけません。夢は「叶う」とうれしいですが、ご希望に「適う」商品はなかなかありません。ね。意外といいかもしれないでしょ。

 つぎに新しく搭載された機能は……えーと……ありません。こんだけです(苦笑)。

 でもでも、以前からあった機能も、より使いやすく進化! そーなんです。Japanistといえばダンナ。例の九つの辞典を搭載しているお買い得な機能を忘れちゃいけません。これこそが、ATOKを持ってるくせに、ぼくがJapanistを使う理由でもあります。ATOKも辞典検索できますけど、ATOKで使うための辞典は別売です。ところが、Japanistには、標準で付属している。しかも安い! すばらしい〜

 で、その辞典検索機能ですが、いままでは敏腕辞典って名前でしたけど、こんどのJapanistでは、メディアパネルと呼びます。ま、やってることは同じなんですけどね。「辞書検索」「クリップアート検索」「郵便番号辞書検索」が利用できて、単独で検索する他に、必要なときにJapanistと連携して、ブリッジメニューから検索、表示できます。

 では、なにが進化したかというと、今度のメディアパネルは、起動時にアイコンの状態(アンカーと呼ぶらしい)で待機していて、検索が実行されたときに拡大され、検索が終わると元の大きさに戻り、邪魔にならずに使うことができるのです。以前の敏腕辞典は、なんか邪魔だったんですよね。最小化していても、画面の隅の方に細いバーみたいなのが残って、なんとなく気になるというか、デスクトップの画面デザインを崩すというか……

 ちなみに、メディアパネルを起動してるときはこんな感じです。画面のデザイン(色合いだけですが)も変更できます。


 あと、便利な機能として、類義語をすぐに検索できます。下の図のような感じですな。「日々」と打ち込んで、類義語辞書を呼び出せば(デフォルトではCtrl + I )すぐに、「来る日も来る日も」なんて言葉もありますぜダンナ。と、Japanistくんが教えてくれるわけです。これは、リソースを食いまくるメディアパネルを起動しておかなくても使用できる辞書です。


 まだありまっせ。和英辞書も、メディアパネルを使わなくても、瞬時に呼び出せる辞書です。下の図のようになります。


 これは「入力」と打ち込んでから、和英辞書を呼び出した画面です。inputが最初に表示されるのは当然として、typeって単語が出るのもうれしいですね。用例も表示されるし、なかなか本格的です。

 Japanistは、そもそも英語に強いというか、ふつうに変換キー(スペースキーですな)を押してけば、カタカナ英語を英単語に変換できます。上の例でいえば、「インプット」と入力すれば「input」と変換できる。でも「入力」から「input」には直接変換できるわけではないので(変換してもらっちゃ困るわけですけど)、この和英辞書と併用すれば、さらに便利というわけですね。

 そうそう。以前に書いた「わたしはジャパニスト」では触れなかった、入力予測機能についても、このさいだから触れておきましょう。入力予測というのは、以前に打ち込んだ言葉が、ずらずらと表示される機能です。下の図のようになります。


 なんだか、人さまに、ぼくの書いてる文章を暴露されているみたいで恥ずかしい機能ではありますが(笑)、「日々楽々ワイド劇場」と打ち込みたいとき、以前にその言葉を入力していれば、「ひび」と打ち込んだ段階で、入力場所の下に、上の図のように、候補として上がってきますから、あとは、矢印キーで選択して確定するだけです。これ、最初はありがた迷惑みたいな機能だと思いましたが、どうしてどうして、女子高生ふうに言うなら、超便利! って感じですよ。

 いかがでしたでしょうか。後半は、例によって、テレホンショッピングみたいになっちゃいましたけど、まあ、そんだけ、ぼくのお気に入りのソフトなのです。ただ、Japanist2002をお使いの方が、2003にバージョンアップする価値があるかというと、途中でも言った通り、答えはノーです。Tablet PCを使うのでなければ、新機能と呼べるのは、類義語のヒント表示だけですからね。肝心の変換効率も、まったく変わっていないようですし。ぼくも、ちょっとお金の無駄遣いをしてしまったなと、後悔しております。まあ、日本語変換ソフトって好きだし、エッセイを一本書けたからいいんだけどね。と、自分を慰めたりしてる今日この頃です(苦笑)。


 Japanist2003は、富士通の製品です。興味のある方は、富士通のホームページで、より詳しい情報をどうぞ。


 ※補足(2003/04/02に追記)
 この、「Japanistおまえもか」を書いてしばらくしてから、キー設定とはべつの箇所を確認したくて、もう一度、2002の設定ファイルを2003に読み込んだら、なんと、キー設定が反映されちゃった。なんで? 前は反映されなかったのに?

 うーむ。わからん。もうJapanistのデフォルトで、身体を慣らしてしまおうと思って、キー設定のところはいじってなかったのだけど(だから、2002の設定が反映されたことに気づいたのだけど)、またまた、以前の環境に戻って、喜んでいいんだか、悲しんでいいんだか、よくわかりません(苦笑)。

 というわけで、2003へバージョンアップしようと考えているみなさん(非常に少ないと思いますが)。キー設定も反映されるかもしれません。「かも」です(苦笑)。


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