わたしはジャパニスト



 ジャパニストいいかも!

 これをお読みのみなさん。いきなり何を言ってるんだとお思いのことでしょう。ついにTERUもご乱心か? なんて思われるとマズイので、説明せねばなりますまい。

 まずもって、「ジャパニスト」とは、富士通が作ってる日本語変換ソフトのことでございます。正確には「Japanist2002」という製品名。聞いたことあります? ぼくは聞いたことありませんでした。日本語変換ソフトって、OSに最初からついてるヤツ以外にも、いくつかのメーカーが作ってて、有名なのはATOKとか、まあ、いろいろあるわけです。ぼくは、そのいくつかを使ってきた経験があるんですが、こいつはマジで知らなかった。

 えーと。そもそも富士通は「OASYS」というワープロ専用機を作ってましたよね。これなら知ってるでしょ? ぼくは知ってました(しつこいか)。知ってるだけで使ったことはないんですが、親指シフトという、ちょっと特殊な入力方法で(慣れると快適だとか)有名なワープロ専用機です。いや、でした。と過去形で書くべきだな。

 そうなんです。みなさんもご存じの通り、ワープロ専用機って、すっかりパソコンに負けたというか駆逐されたっていうか、早い話、製品としてぜんぜん売れなくなっちゃって、ほとんどのメーカーが販売(製造)をやめちゃったんですよね。

 ぼくのエッセイの常として、すぐ話題が逸れるんですが、最近インターネットでワープロ専用機のことを調べてたら(いや、このエッセイを書くんで調べたんですが)、「ワープロ専用機で扱える最大文書サイズはどれぐらいか」っていうタイトルのページを見つけました。個人の方が作ってるページで、実際にワープロ専用機を作っている――作っていた――会社のサポートに問い合わせて、ワープロ専用機で書ける、最大文書量を調べたんだそうです。

 それによるとですね、文豪とかOASYSとか、ぼくでも知ってる有名なワープロ専用機でも、だいたい、原稿用紙150枚程度が、最大サイズとのこと(2001年5月調査)。

 これにはちょいと驚きましたね。ワープロ専用機って、「日本語を書くために特化した機械」だと、ぼくはそう思っていた。であるならば、大作家の先生が、大長編だって執筆できるような機械を想像するじゃないですか。いや、少なくともぼくはそう思っていた(しつこいね)。

 ところが、原稿用紙150枚ですって? ぼくの「召しませMoney!」だって、原稿用紙で800枚近くありますよ。それでもプレーンテキストのファイルにしたら、たかだか500KBぐらい。一太郎のファイルに変換したって570KB。ワープロ専用機では、フロッピーにだって楽々入るサイズの文章も書けないってことになる。うーむ。これは滅びるわけだ。納得。

 と、そんなわけで、ワープロ専用機であるOASYSも滅んだわけですけれども、これを愛用してきた人たちからしたら、「そんなバカな!」ってなもんです。とくにOASYSは、親指シフトって特殊な入力方法を使うから、これに慣れきった人は、パソコンのキーボードなんか使えるかバカタレ! こちとら江戸っ子でい! と、怒り狂ってるはずなんです。たぶん。いや、ホントはよく知らないけど(苦笑)。

 そんなOASYSユーザー様のために、富士通はワープロソフトを作ってるんですよ。パソコン用の。その名も「OASYS」。って、そのまんまじゃねえか(苦笑)。いえ、いいんです。そのまんまで。はい。べつに文句はありませんです。使ったことないし。

 なんだか、だらだらと説明してますが、「Japanist2002」は、この「OASYS」シリーズの最新作「OASYS2002」についてる日本語変換ソフトのことなんです。それの単体発売ですね。ジャストシステムも「一太郎」に「ATOK」をつけて売ってますが、「ATOK」だけでも単体で発売してますよね。それと一緒。

 さあ、時代背景じゃなくって、製品の概要がわかっていただけたところで、肝心要のJapanist2002について語らせてください。ダメだと言われても語っちゃうけど。

 そもそもぼくは、日本語変換ソフトに、エーアイソフトのWXG Ver.4というのを使ってるんですが、こいつがWindowsXPに対応してないんですよ。エーアイソフトのホームページで、ずーっと(11月の中旬から)対応状況を確認し続けてるんですが、ずーっとWindowsXPでは動作いたしませんと書かれているだけで変化なし。いつごろ対応するのか、そもそも対応予定があるのかも書かれておりません。

 不安だ……

 売れてないからなあ(たぶん)。自分以外に使ってる人に会ったことないからなあ(真実)。エーアイソフトなんてしょぼい会社だもんなァ(こら)。いいソフト作ってる会社なんだけどなァ(フォローしとく)。でも、ジャストシステムはATOKのアップデートモジュールを早々と(10月23日の時点で)公開したのになァ。

 そんな不安な日々を送りながら、来年あたり、WindowsXPの入ったパソコンを買ったら、WXGは使えなくなるかもな。と、半ば諦めかけていたんですが(いや、すでに諦めてますが)、そんな折り、12月7日に、Japanist2002なる、未知の(ぼくにとってね)日本語変換が発売されるという情報をキャッチ。当然WindowsXP対応。

 これは買わねばなるまい! ぜひ買いたい! 買わせてください!

 とは、べつに思いませんで(笑)、ふ〜ん。そんなのあったんだ。へーっ。ってな感じだったんですが、なんとなく気になって、富士通のページを見てみたら……

 これは買わねばなるまい! いや、買いたい! ぜひぜひ買わせていただきたい!

 と、思ってしまいました。いったい、どこがそんなに気に入ったのかと言いますと、「入力作業効率250%アップ!」という、うさん臭い宣伝文句にではなく、電子辞書が同梱されてるからだったのです。すごいですよこれ。

 現代国語辞典/英和辞典/和英辞典/漢和辞典

 と、ここまでは普通だけど、さらに――

 四文字熟語辞典/カタカナ新語辞典/類義語実用辞典/故事ことわざ辞典/慣用句辞典

 以上、全九巻の辞典が入ってるんですよ。もうね、辞典大好きなぼくとしては、ギャーッ! ステキ! ラブラブ! と、琴線に触れまくり。でも、これでお値段が高かったら意味ないんですが、なんと、定価で5,800円。お店で買えば、五千円以下で買えるでしょう。実際、4,800円ほどで買ってきました。

 さっそくインストール!

 Japanist本体のインストールが終わったあと、ぼくの大好きな辞書たちが、ぞくぞくとパソコンに吸い込まれていく様は、いやはや、ホント見ていて気持ちがいいですなあ。辞書マニアですな。辞書フェチですな。自分で書いてて、なんか危ないですな(苦笑)。

 ところが、そんな喜びも束の間…… インストールされたJapanistを使ってみて、いきなり挫折しました。

 使いにくい! ダメだこれ!

 いや、ホントにそう叫びたくなるくらい使いにくい。べつにデフォルトで親指シフトになっているわけではなくって(親指シフトエミュレーションモードというのがあるんですよ)、まあ、ごく普通のパソコン用キーボードで使う設定になっているんですが、これがどうにもしっくりこない。

 またまた、ぼくの環境を説明しますと、WXGを使いつつ、じつは、キーの動きはATOKに合わせてあったんです。というのは、ぼくが小説を書き始めたのは、Macintoshというパソコンからで、そのとき、ATOK8を使ってたんですよ。これ、三年ぐらい使いました。となると、指がすっかりATOKになっちゃってるんです。慣れ親しんだ環境ってヤツですな。

 んで、パソコンをWindowsに変えてからもATOKを使えばいいのに、なにを思ったか、WXGにしちゃったんですけど、WXGには、ATOK風にキーを変える機能があって、しかもそれが、ほぼ100%ATOKと同じ動きになるので、まーったく問題なかったわけです。いえ、まったく問題ないどころか、本家本元のATOKより、ATOKらしいんですよ。と書くと誤解があるな。正確には、Mac用のATOK8とすごく似てるんです。変換中の文字の色とかが。だから、違和感がないどころか、Macのノートパソコンを使っていたときと本当に同じような感覚で使えて、それがすごく気に入っていたわけなのでした。ああ、そうか。だからWXGにしたのか。と、いまごろWXGにした理由を思い出しました(苦笑)。

 話が逸れましたが、Japanistくんにも「ATOK風」にする機能があるんですけどね、これがどうもね、なーんか違う。微妙に違う。慣れちゃえば問題ないとはいえ、その慣れるまでがイライラするんだよ。ダメなんだよ。ぼくにはそんな時間はないんだよ。スカッと慣れ親しんだ環境になってくんなきゃイヤなのよ〜。

 これは使えない。いいや、辞書だけ使おう。Japanistと連携して使うと便利なんだけど、付属の辞書は、ぜんぶ普通の電子辞書規格だから、それだけでもちゃんと使えるんだから。(Japanistと関係なく動作する、辞典の検索ソフトがちゃんと付いてますし、たぶんDDWinのような、オンラインソフトでも検索できると思います)

 うん。そうしよう。辞典だけ使おう。と、挫折しかけましたが、そこはそれ、安いたって五千円。なんとかしなきゃという思いもありまして、キーボードの細かいカスタマイズをしてみました。これを乗り切れば、これさえ乗り切れば〜。

 一時間ほど経過……

 ジャパニストいいかも!

 おお。一行目に戻った(笑)。はい。キーをぼくの慣れ親しんだ形式にカスタマイズしましたら、えらく使いやすくなりました。って、当たり前だな。そう。いままでと同じならべつに喜ぶほどじゃないわけでして、実際は、いままで以上に便利になりました。

 まず、付属の辞典の連携を見てみます? 下のサムネイルをクリックしてみてくださいませ。


←クリックすると別ウインドウで開きます


 どううです? 入力した単語を、こんなふうにすぐ調べられるんですよ。便利でしょ。ちなみに、「辞典」じゃないけど、この同じメニューの下の方にある、「クイック類義語」を選択すると、たとえば「学習」だったら、「学業」とか「勉学」とか「講習」とかの、類義語に変換できます。「クイック単漢字」を選ぶと、いわゆる漢和辞典みたいなのが表示されて、その漢字の画数や音読み訓読みはもちろん、異字体の有無なんか調べられます。

 えーと、あとは、最近の日本語変換によくついてる、どうしても読みのわからない漢字は、マウスで手書きすると検索してくれる機能もついてます。

 ではでは、肝心の変換効率なんぞの説明を……

 おっと、その前に、いままで自分が登録し続けてきたユーザー辞書を移植したことはいうまでもありません。残念なことにWXGの出力ファイルには対応してなかったんで、一度、エクセルに読み込んで、カンマ区切りのCSVファイルにしなきゃいけませんでしたけどね(やっぱ、マイナーなソフトを使ってると、こういうところで苦労があったりする)。

 で、もちろん「ランルドルネ」だとか「ファリーナ」だとか「レスター・グレイフォード」だとか「ロプシュア星」だとか「メイフォア」だとか、デフォルトの辞書では絶対に変換しない文字が、ビシバシ変換するのは当然でして、こんなことではわたしは驚かない。というか喜ばない。

 ところがですね。ふと「ぺんてぃあむ」と打ち込んで変換してみたら「Pentium」となったのにビックリいたしました! 「まっきんとっしゅ」と打ち込むと「Macintosh」になる! 「くりすます」は「Christmas」になります! 「いーめいる」は「e-mail」だ! ギャーッ! ステキ! 英単語のスペルを調べなくてもいいんだわ!

 ううう。高校を卒業してから十数年。英語のスペルなんか揮発しまくりの、ぼくのショボイ脳味噌になんと優しい日本語変換ソフトであることか。これはうれしい。

 顔文字はどうかね? 「きす」って打ち込むと「(^з^)-☆!」とか、まあ、いっぱい出てきます。これもおもしろい。いやこれはWXGにもあったな。

 異体字辞書と言うのもありますな。たとえば「万田さん」を「萬田さん」に、「高木さん」を「木さん」にもできます。けっこう多いのは「渡邉さん」かな?

 このほか、デフォルトでインストールされる辞書は、法律用語と政治用語、インターネット・パソコン用語、そして古典語。定番の郵便番号辞書ももちろん入ってます。あ、ここで言ってる「辞書」っていうのは、上に書いた「付属してる全九巻の辞典」とは、べつでして、いわゆる、Japanistが「ひらがな」を漢字に変換するときに使う「辞書」のことですよ。

 大抵の人には必要十分な「辞書」が最初から揃ってるんですが、このほかにも、富士通のサイトに、Japanist用にいろんなオプション辞書が登録されてまして、ぜんぶ無料でダウンロードできます。IEのVer.4以上を使えば、ダウンロードとインストールを同時にやってくれるので、とっても便利。

 そのオプション辞書もいくつか入れてみました。インテリア辞書とか、シネマ辞書とか、競馬用語だとかいろいろあるんですが、たとえば、シネマ辞書を入れましてですね、「あいとかなしみのぼれろ」なんて打ちますと「愛と哀しみのボレロ」と、キッチリ変換してくれます。旅行辞書なんてのもありますよ。「あかめしじゅうはったき」は「赤目四十八滝」ですな。うーん。すばらしい! J-POP辞書なんかもありますから、「浜崎あゆみ」も「倉木麻衣」も、一発変換。「サンプラザ中野」だって「米米クラブ」だって大丈夫。ついでと言っちゃなんだけど、「北島三郎」だって大丈夫だ! って、それはJ-POPじゃないだろ!

 いやしかし、こういう「オマケ系」の変換はともかく。肝心の変換効率の方がいかがなものか。と、じつはこのエッセイからJapanistを使ってるんですけれども、いまのところWXGより悪いって感じはありません。ATOKと比べたらどうかわからないけど、まあ、似たりよったりかな?

 えーと、少し細かい話になりますが、単語の前後の意味を解釈して変換する、ATOKでは「用例変換」、WXGでは「係り受け変換」と呼ばれる機能も、一応付いてるみたいです。たとえば、次のように文章を打ったとします。

「絵を描いた」

「作文を書いた」

 わかります? これ続けて打って、続けて変換してるんです。少し前の日本語変換ソフトだと、一度「かいた」が「描いた」って変換されると、つぎに「さくぶんをかいた」って打って変換すると、「作文を描いた」となっちゃうんだけど、最近の日本語変換ソフトは、前の単語の意味を解釈して(というか、単に関係性が登録されてるだけだけど)、次の言葉を変換してくれます。これが、「用例変換」あるいは「係り受け変換」と呼ばれる機能です。Japanistにも、似たような機能がついてるようですね。

 ところが、Japanistですと……

「彼女が本を読んだ」

 と変換したあとに、「かのじょがかれをよんだ」と打つと――

「彼女が彼を読んだ」

 と、こうなっちゃう。WXGだと、「彼女が本を読んだ」あと、「彼女が彼を呼んだ」と、キチンと変換します。Japanistは、ちょいと係り受け変換が弱いって印象ですね。Japanistは、彼女は本を読んだあと、彼のことも読んじゃう。彼女にぼくの心を読まれるのはイヤだなァ。浮気がバレるなァ。という男性は要注意です。

 しかしながら、最近の日本語変換は、ある意味、行き着くところに行き着いている感じで、これ以上の効率アップは、なにか、もっとすごい技術革新がないと無理なんじゃなかろうかと思いますね。そういう意味じゃ、現段階でJapanistにも、それほど問題はない気がします。係り受け変換だって、ものすごく変換効率を上げてくれるってわけではないしね。

 あ、そうだ。ぼくの文体は話し言葉で構成されることが多いのだけど、これはほとんど誤変換がないですね。話し言葉に強いというのは、小説書いてる人にはいいかも。つまり、ぼくのことだけど(笑)。


 結論。

 いままでOASYSを使っていて、親指シフトをパソコンでも使いたい人は、絶対に買うべし! ちなみに、普通のパソコン用のキーボードを、親指シフトキーボードに見立てるためのシールも入ってます。でも、本物の親指シフトキーボード(パソコンに接続するためのモノ)も、富士通で買えますから、さらに完ぺき!

 えーっ。わたし親指シフトなんか関係ないわ。という奥様。あなたもJapanistを買いましょう。なんてったって、辞典が九つもついてるのに五千円以下! これはお買い得ですよ。マジで。

 んー。でもねえ。自分の登録した辞書を移植するのが面倒だなあ。ごもっとも。でも大丈夫。いままで書いた文書(テキストファイル)をJapanistに読み込ませれば、全自動で単語登録してくれます。その名も「おてがる単語登録」。いや、まったく名前の通り、おてがるです。

 冗談じゃないよ。OSに最初からついてるので十分だよ。うっ。それを言われるとつらいかも。まあ、確かにOSについてるヤツで十分ですなァ、普通は。

 って、それが結論かよ(苦笑)。


▼ ちょっと待った! すいません、重大な欠陥を発見いたしました!

 このエッセイを書いてアップしたあとに、重大な欠陥を発見したので追記します。と、いいますのは、Japanistくん、システムリソースをむちゃくちゃ食いまくるんです。付属してる「辞典」をJapanistと連携させるには、「俊敏辞典」って機能を有効にしなきゃいけないんですが、これはシステムに常駐するタイプのソフトなんです。こいつが、けっこうリソースを食う!

 で、システムリソース確保のために、俊敏辞典を終了しちゃうと、Japanistの魅力は半減するんですが、魅力が半減したJapanist本体だけでも、いままで使っていたWXGより、リソースを食います。WXGの場合、起動時にはシステムリソースの残りが70%ぐらいあったんですけど(あくまでも、ぼくの環境です。常駐ソフトをまったく使ってない人は、もっとリソースが多いだろうし、その逆に、もっと使ってる人は、もっとリソースが少ないはずです)、なんとJapanistをデフォルトの日本語変換にして起動させると、リソースの残りは60%です。

 WXGより、10%も燃費が悪い!

 うーむ。こりゃまいった。じつはぼく、ブラウザとホームページビルダーとフォトショップの三つを同時に立ち上げて作業することが多いのですが、WXGでは、なんとか動いていたWindows98は、Japanistを日本語変換にしていると、すぐにリソース不足で不安定になります。どうやら、リソースをあまり心配しなくていいWindowsXPにするまで、Japanistはお預けかも。くう、残念!

 というわけで、Windows9X系のOSを使っているみなさんは、ご注意を!



 ちなみに、下記がJapanistの公式ページです。

 http://software.fujitsu.com/jp/japanist/index.html


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