書くと言うこと



 今世紀最後の更新は、このエッセイで絞めようと思ってたんですが、一向になにを書いていいのか思い浮かばない。で、ハードディスクにある、過去に書いた文章をつらつらと見ていたら、とり子さんという、創作小説を発表なさっている方の掲示板に、以前書き込んだ「書き手として、読み手として」という内容の文章が出てきました。とり子さんが設定した設問に答えるという形の掲示板だったのです。取ってあったんだなあ、オレ。

 まあ、そんなわけで、ここにリサイクルさせていただきます。

 しっかし、二十世紀最後の更新が、使いまわしかよ…… って、思わないこともないですが、頭の中カラッポで、なーんにも思い浮かばないんです。ごめんなさい。でも、うちにも、創作小説をお書きの方がけっこういらっしゃるようなので、何かの参考になればと。

 一応、オリジナルから加筆修正してあります(念のため)。


1:小説を書くとき、なにから設定しますか?

 長編と短編では違うのですが、基本的には「アイデア」を考えるところから始めます。とくに短編の場合は、物語の核になるアイデアが命(逆に言うと、それが浮かんだときだけ書ける)。

 しかし、長編の場合は「こういう感じのお話を書きたい」という漠然とした欲求から始まることも多いし、キャラクタが先にあって、そのあと物語を考える場合もあります。その後、物語の基本的な流れ(プロット)を作りながら、キャラクタをより細かく設定します。とにかく、ぼくの場合、長編の場合はキャラクタ重視です。魅力的な登場人物は書いていても楽しいし、物語を豊かにしてくれます(と、思います)。まあ、なんにしても、アイデアと、物語の骨格は、ある程度決めてから書きますね。ラストも書く前に決まっていることがほとんどです。極端な例では、ケインとラニーなんか、三本分のストーリーを考えてから書き始めました。もっとも、それで書くスピードが速くなるわけじゃないんですけど。


2:比率。(キャラクタ:情景:心理)

 長編で言えば、「6:2:2」でしょうか。
 情景は必要最低限ですませることが多いですが、読み手の方の「想像」を刺激する程度には書くようにしています。心理描写は、ここぞというときは力を入れますが、それでも少なめかも。キャラクタに関しては、上にも書いたように、長編の場合は、かなり力を入れます。ただし、描写という方法ではなく、キャラクタが生き生きとするような「セリフ」に力を注いでいます。

 だからでしょうか、書いているうちにキャラに感情移入しすぎて、筆が暴走することもしばしば。キャラの暴走に合わせて、プロットを変更してしまうことすらあるのです。なんだか、上に書いた「ストーリーを決めてから書き出す」というのと矛盾してますが、これが長編を書いてておもしろいところでもあります。要は「例外だらけ」ってことですね。だから、さっさと書けないわけです。

 具体的には、JunkCityのメイフォアと、召しませMoney!の矢野絵里子が、暴走キャラです。彼女たちは、ヒロインを食っちゃうキャラに成長してしまいました。それでも、ニムはがんばってますが、麻里はダメでしたね。続編ではがんばってもらいましょう。

 しかし、パソコンって、書き直しが楽すぎますよねえ。書き終わりゃしない。(そういうわけで連載ができません。トホホ)


3:小説を書く上で、なにか気をつけていることはありますか?

 まず「タイトル」ですね。パッと見て、興味を引きつつ、内容が想像できるようなタイトルをつけたいなあと思ってます。が、成功してるとは言い難い……

 そして「書き出し」。やはり、読み手の興味を引くような書き出しを心がけています。こういうのって、「お兄さん、いい子いるよ。うちはみんな若いよ」という歓楽街にいる呼び込みのアンチャンに似てるかも。で、実際その店に行くと年増ばっかり…… なーんて、ことにならないよう、努力します。

 技術的な面で言えば、漢字とひらがなの使い分け。とくにパソコンでは、難しい漢字も簡単に出てきてしまうので、意識的に、ひらがなに直します。あとは、送りがなと句読点の位置。自分で朗読してみて、読みやすい位置に句読点を置き、送りがなは「本則」に合わせています。(誤字脱字は言うまでもなく気をつけています)


4:他の方の小説を読む時にストーリー以外に何か気になりますか?

 読みやすい文章であるかどうか。難しい表現をされると読む気がなくなります。シリアスなストーリーであっても、そこに使われる文章は、平易な表現であるべきだと思います。それが、読者に対する、最大のサービスだと思うのです。

 また、句読点の置き方や、段落の付け方などの技術面も気になります。とはいえ、自分より巧い人はたくさんいるので、表現方法を勉強させてもらうことの方が多いですけど。



 つづいて「読み手として」。


 まず、「書く」ということを始めてから「読む」時間がずいぶん減りました。書くことは楽しいのですが、読むこともすごく楽しいので、少し残念。まあ、人はだれでも1日に24時間しか使えませんから、しかたないですね。あまり寝不足では仕事にも支障がありますし。(ああ、1日が48時間あればなァ……)


1:一見の小説を買う時に、なにを真っ先にチェックしますか?

 ジャンル。つまり自分が好きなジャンルかどうか。となると、必然的に早川文庫の棚に行くことが多くなります。


2:「ナイス俺的ツボヒット」と思うのはどんな時ですか?

 自分の望んだラストに到達したとき。逆に、望んではいなかったけど、すごくうまく裏切られたときは、「オレ的ツボ」も、ヒットではなくホームランになってしまうので、この辺は難しいところ。あと、読んでいる最中に、むしょうにウィスキーが飲みたくなるときは、ツボにはまりまくりのときなんでしょう。(ハードボイルド系ですな)


3:逆に「いかんよこれは……」と思う時があるならどんな時ですか?

 望んでもいなく、うまく裏切られてもいないラストを読んだとき。そもそも、ぼくが小説を書くようになったキッカケは、「この登場人物で、こういう物語なら、オレならこうするのに」。という欲求不満があったからです。だったら、自分で書いちゃえ。と思ったのです。書き始めて、文章を書く難しさをイヤってほど理解できましたが、人間って、後悔は先に立たないものなんですねえ。


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