小説のネタ



 え〜っと、前回ずいぶんタイムリー(新聞報道の翌日)に、推古天皇についてのエッセイをアップしましたが、ああいう「よ〜し、いっちょ書くか!」って気にさせる時事ネタは、そうそうあるもんじゃありません。雪印が大騒ぎになったときも、コンコルドが落ちたときも、じつは、エッセイを書こうと思って、それなりにキーボードを叩いたんですが、物にならず。どーもぼくは、ニュース性の強い話題って弱いみたいです。ジャーナリストにはなれんな(ならんけど)。

 と言うわけで、時事ネタは諦めて、今日も今日とて、勝手気ままにキーボードをつらつらと打ち込みましょう。今回は、TERUがボツにした小説のネタや、書いている(あるいは書こうとしている)ネタを、いくつか紹介します。星新一の「出来そこない博物館」みたいな感じかな。


■キャラクタの法則

 これ、長編の予定で書き始めた作品のタイトルです。三分の一ぐらい書いたんですが、なんか気分が乗らなくなって中断。もう一年以上、ほったらかしです。どんな内容かと申しますと、「小説世界」が舞台です。つまりですね、登場人物は、みんな自分が「小説の中のキャラクタ」であることを知っているんです。それでもみなさん、作家からお声が掛かって、作品に登場できるまでは「ごく普通の日常生活」を送っていらっしゃるわけです。ここで言う普通の生活とは、われわれの「現実世界」と同じって意味です。

 さて。現実の世界にいろんな人がいるように、小説世界にもいろんな人がいて、作家は自由にその人たちをチョイスして、作品に登場させることができるんですよ。たとえば、ハードボイルド探偵を登場させたいなら、そういう生活を「小説世界」で、実際に送っている人物を探して、作品に登場させる。当然、彼ら(あるいは彼女)には、その役柄の経験(リアリティ)があるんで、作家も良い作品が書けるという寸法です。(ただし、すでに他の作家に「使われている人」はキャラクタ所有権がその作家にあるんでダメです)

 で、具体的なストーリーなんですが、ある日、冴えない生活を送っていたキャラクタ予備軍の男性に、ついに作家から出演のお声が掛かるのです。しかも主役でです。

 やった! やっと小説に登場できる! これで、オレも生まれてきた意味があるってもんだ。

 と、その男性は喜ぶのですが、自分を指名した作家が、冴えないオンライン作家(誰のことだ……)だったもんだから、ちょっとガッカリ。しかも、作品の内容が、ふだんの自分の生活とはまったく異なるハードボイルド。

 なんでだあ! オレは普通のサラリーマンだぞ! 

 じつは作家はハードボイルドなんか書く気は無いのです。普通の生活しか送っていないキャラを、わざと、シリアスなハードボイルド世界に送り込んで、そのオロオロする様をコメディに仕立てるつもりだったのです。もちろん、キャラには内緒ですよ。いわゆる、どっきりカメラのノリですよね。

 ところが、ヒロイン役の女性が作者の思惑に気づきます。この女性も、まあ普通の人なんですが、じつはコメディが大嫌いで、コメディ作品にだけは、ぜったい出演したくないと思っていたのでした。だから彼女は、作者の意図に反して、殺人を犯してしまうのです。しかも、殺したのはその世界の国会議員。もちろん大事件になります。

 ふふふ。これでどうよ。コメディにするつもりでしょうけど、ヒロインが殺人を犯してしまって、それでもコメディにできるモンなら、やってみなさいな。

 と、ヒロインは、作者に挑戦状を叩きつけて、逃走します。

 作者はキャラの暴走に戸惑います。が、ここで負けたら作者イコール神としてのこけんに関る。新たにズッコケ警部を登場させて、無理やりコメディに持っていこうとします。

 ところが。その警部がまた、ズッコケ警部という役柄に不満たらたらで、ヒロインが作者に反旗を翻したことを知るや、自分の真面目な刑事になって、真面目に犯人(ヒロイン)を逮捕しようとするのです。

 まあいいさ。みんな勝手にやってくれ。話が深刻になればなるほど、主人公のオロオロする様がコメディになるんだから、と作者は負け惜しみを言うのですが、その主人公からして、ちょっと目を離していた隙に、フィリップ・マーロウ(超有名な、ハードボイルド探偵)に弟子入りしていて、ハードボイルドをやる気満々になっていたのでした。

 というお話です。たぶん完成しないですね。こういう「キワモノ」は、思いついたときに一気に仕上げないと、醒めるっていうか、「こんなの、おもしろいか〜」という気分になっちゃって、書けなくなります。というわけで、完成の見通したたず。

注)この作品は、その後「リレー小説」の下敷きとして提供し、一応、完成しました。


■スリーピング・ソウル

 これも長編予定で書き始めた作品。やはり半分も書かないうちに断念しました。強姦殺人という、ショッキングな事件で妻を失った三十代前半の男と、父親にレイプされて家を飛び出した少女の物語です。

 二人とも心を閉ざしたまま、それでも外見上は普通に振る舞って生きているのですが、彼らは、ふとしたキッカケで出会い、お互いの心を通わせ、そして徐々に、眠っていた魂が覚醒を始める。まあ、そんな設定。もちろん、コメディではありません。フランス映画ふうの作品を書いてみたくなったですが、ぼくには無理だということがハッキリわかっただけでした。


■おまかせください!(仮題)

 中編予定の作品のタイトル。タイトルが決まっただけで、まだ書いてません。以前、友人のリクエストで書いた「たまわりてソウロウ」というカウントゲット作品があるんですが、これがまあ、われながらひどい出来で、内輪ネタの嵐。まあ、カウントゲット記念だからこそ許されるって気もしますが、それにしても、出来が良くないんで、リベンジを思い立ちました。「お調子者の何でも屋」と「冷静沈着な探偵」を主役にして、あらたに現代物でコメディを書こうと画策中。ま、完成はいつになることやら。


■幽谷の回廊(仮題)

 タイトルは重めだけど、これもコメディ。花嫁の理由とゴースト・パワーズを足して二で割ったような作品を考えたんですが…… うーん。どうでしょうね。

 えっとですね。とある青年が、自分が死んだことに気づいていない女性の幽霊に、取り憑かれちゃうんですよ。で、その幽霊が、なんで自分が死んだことをわかってないかと言いますと、じつは記憶喪失なんです。どうも、死んだとき頭を強く打ったらしいんですな。どうりで、頭から血を流している姿のはずだと。ね、ショッキングな登場でしょ?

 で、青年はですね、このままじゃラチが明かないんで、その幽霊のことをいろいろ調べます。その過程で、幽霊さんの方も、やっと自分が死んでるんだと納得はするんですが、青年と一緒に自分のことを調べているうちに、死んだ理由が、だれかに殺されたということがわかるんですよ。もちろん犯人は不明。これじゃあ、成仏できないわあ! という話しになって、青年と犯人探しを始める。(なにせ記憶が無いんで、誰が自分を殺したかわからない)

 どうでしょう? ハッピーエンドにするかバッドエンドにするかも決まってません。ま、ハッピーエンドと言っても、彼女が生き返るわけじゃないしねえ。彼女が最後に成仏して、どーもありがとう。という、ありきたりなラストになりそうな感じですよね。困りましたねえ。どなたか、おもしろいラストを思い浮かんだら、教えてくれませんか? こっそりと。


■真夏の夜の夢

 アップしてあるホラー作品じゃないです。こちらはシェイクスピア先生の戯曲そのもの。元は戯曲ですが(いわゆる脚本ね)、それを小説形式に置き換えて、TERU調というか、ぼくらしい雰囲気で、翻訳してみようと思い立ったのです。ただし英語なんか読めませんから(それが古い英語なら、なおさら)、すでに翻訳されている物の改変ってところでしょうかね。

 なんで、こんなことを思い立ったかといいますと、大した理由はありません。シェイクスピア作品の中では、一番好きってことと、ハーミヤとヘレナの掛け合いが、いかにもコメディになるなァって思ったからなんですよ。もちろんライサンダーとディミトリアスもね。四人の男女が繰り広げる、一夜の不思議な恋の物語。ん〜、いいじゃないですか。ご存じのとおり、ハッピーエンドだしね。ぼくにピッタリだ。といいつつ、これも挫折中ざんす。(最近映画になったみたいだから、それを観たら再開するかも)


■わたしはハードボイルド

 パーネル・ホールって作家をご存じですか? スタンリー・ヘイスティングズという、冴えない中年探偵を主人公にしたシリーズ物を書いてる作家です。とはいえ、重いハードボイルドじゃありません。ライト感覚。スタンリーには、奥さんもいるし、ニンテンドーで遊ぶ息子までいる。しかも探偵とは名ばかりで、やってる仕事は、保険会社の調査員。どうも、作家本人がそうだったらしいですね。で、この普通の(だがカタギでもない)中年男が、毎回、殺人事件に巻き込まれて、命を狙われたり、刑事にバカにされたり、と、さんざんな目に会いながら、なんとか犯人を探し当てる。と、そんな感じのお話です。カッコいいアクションも、華麗な推理もありません(推理はするけど、たいてい外れる)。

 いやあ、これを初めて読んだとき、衝撃を受けましたね。こんなハードボイルドもありかって。そうです。おもしろかったんですよ。回を重ねるごとに、マンネリになって、いまはもう読んでませんけど(七作品まで読んだ。いま、何巻出てるか知らない)、マネしてみようって気になってしまったのでした。

 で、ふつうの男が殺人事件に巻き込まれて、それの容疑者にされそうになって、すったもんだで犯人を探し当てる…… はい。挫折しました。ちゃんとプロットを組んで、三分の一ぐらい書いたんですが、そこから止まってます。これは古いですよ。もう4〜5年ほったらかしですね。すでに腐ってます。だって、主人公が「パソコン通信」なんてやってるんだもん。で、その主人公、インターネットを始めようかどうしようか悩んでたりして。おいおい。いつの時代だよって感じ。最近携帯電話を買った。とか書いてあるし……

 たぶん、もう書きませんね。だって、マジで物マネなんだもん。まあ、そのむかしに書いた、ぼく個人の練習作品ってとこですねえ。


■スーパーマンの奥様

 スーパーマンの恋人の続編。最初の「恋人」を書いてるときに、すでにアイデアはあったんです。だから、続けて書くつもりだったんですが、こいつも中断してます。ほかのアイデアを作品にするのに忙しくって、ほったらかしです。ま、いつか書くかも。


 とまあ、こんなところですかねえ。あとは、アップすると小説のページに予告してあるワンダーキャットや、召しませMoney!の続編。そしてケインとラニーの第二部を、こそこそ書いてます。


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