彼女はドリー



 前回、ノートパソコンが欲しい〜。なんて、子供がおもちゃ屋さんの前で駄々をこねてるようなネタを書いてしまったので(しかも、第一回目がですぜ)、今回は創作小説のページに相応しいネタなんぞ書いてみたいと思います。

 このハイスピードな時代においては、だいぶ古い話題になりますが、みなさんもドリーという名前を記憶にとどめておいででしょう。そう。高等な哺乳類としては、世界で初めて完全なクローン体として生まれた羊のドリーちゃんです。

 クローン。この極めてSFチックな技術は、まさしくSFの世界では古くから扱われていたネタです。と、書いて、ふと、じゃあクローンを扱ったSF小説ってどんなのがあったっけ? と記憶をたどってみますと…… 思い浮かばない。アンドロイドをネタにしたSF小説はけっこう思い出すのに、「クローン」を主なネタにして書かれたSF小説って、なんか思い出せない。たくさんありそうなのに。ま、もっとも、そんなに読書量が多い方ではないので、読み逃しているクローン物の傑作とかあるかもしれないですね。ご存じの方がいらっしゃったら、教えてください。

 なんか、話がズレました。ズレたついでに、もちょっと脱線しますと、クローンという言葉を聞くと、ついそのSFチックな響きに、試験管を巨大にしたような装置の中で、培養液に漬かって育っていくさまを想像しがちですが、これとクローンとは、なんの関係もないんですよね。試験管ベイビーという言葉がありますけど、あれは卵子を試験管の中で受精させるだけで、べつに試験管の中で育てるわけではない。むしろ、試験管の中で人工的に育てる技術のほうが、クローン技術より難しいような気がします。というわけで、羊のドリーも、試験管の中で培養された「細胞」から、遺伝子を取り出して、それを卵子に組み込み、代理母の子宮に入れるという、現代の人工授精と変わらない方法で生まれたわけです。

 ええと、話を戻しましょう。

 クローン技術で生まれた羊のドリー。このニュースを聞いたとき、やっぱり考えましたよ。クローンを題材にしたSF小説。性ですねえ。ジュラシック・パークを書いたマイクル・クライトン(ERでも有名ですね)あたりだと、クローン技術の悪用で、人間の遺伝子が不法に操作され、ついには人類滅亡の危機に発展する。なんてハードな物語になりそうですが、ぼくには壮大すぎて、そんな話は書けません。

 じゃあ、どんな話なら書けるか、想像してみましょう。

 もしそのクローンが、「愛情をもって育てられた」としたら、たぶん問題は最小限にとどまります。現実に、育ての親しかいない子供はたくさんいるわけですし、現実には、もっと複雑な親子関係だって存在します。代理母に出産してもらった、自分と遺伝的繋がりのある子供を育てる親もいるでしょうし、もっと複雑になると、他人の卵子と精子を提供してもらって人工授精した卵子で出産した夫婦だっています。こうなると、自分で「生んだ」子供ではあっても、遺伝的繋がりはないわけです。それでも、どんな複雑なケースであっても、要は「愛情」があれば、問題は少ないと思われます。クローンであっても、同じでしょう。

 が。これじゃあ、小説になりません。いや、なるかもしれませんが、クローンという題材を扱ったお話としては、醍醐味が薄れるというものです。そこで、もっと過激なパターンを考えてみましょう。事実は小説より奇なり。なんて、言わせませんよ。

 では過激なパターンその1。

 ある女性が、人工授精で出産をしたとします。ですが、その子供はクローン。しかも、その女性自身のです。彼女は、その子を育てて、十分成長した段階で、クローンから脳味噌を取り出し、自分の脳を移植するのです。いわゆる若返り。月並みな発想ですが、ホラー仕立てにすれば、けっこうイケルかも。

 過激なパターンその2

 ある男性が、代理母を使って子供を出産させます。もちろん、その子はクローンですが、男性自身のクローンではありません。そのクローンの遺伝子は、その男性が以前フラれた女性のものだったのです。あるいは、その男性が好きで好きでたまらない、人気アイドルの細胞を(髪の毛とか)を入手してきて、そのアイドルのクローンを作ったという話でもいいでしょう。究極のストーカーですね。これも、月並みな発想ですが、「ロリータ」と組み合わせつつ、その子が成長するに従って、どんどんヤバイ展開にすれば新たな境地が開けるかも。猟奇官能小説なんてね。ただ、間違いなく18禁になるが玉にきずですけど。いや、それが目的か?

 う〜ん…… 自分で考えといてなんですが、こりゃぼくには書けませんな。スタイルが違いすぎる。というわけで、つぎはコメディタッチで考えてみましょう。

 クローンをコメディに仕立てるとしたら、その1。

 伝説の美女を、この世に再現したいという野望を抱く科学者がいたとしましょう。クレオパトラでも楊貴妃でも、この際なんでもいいです。で、その伝説の美女の細胞(やっぱ髪の毛あたりが無難でしょうね)を探し求めて、苦労の末にやっと手に入れて、大喜び。さっそくクローンの製造に乗り出しのだけど、生まれた子供は、とんだオカチメンコだった…… 現代と古代では、美人の価値観が違いすぎるー! ってオチですが、あんまりおもしろくないですね。すいません。

 コメディその2

 未知の惑星に漂流した宇宙旅行者。その惑星は、なんと女性しか存在しない星だったのです(ああもう、この時点ですでにアレですが……)。で、たった一人の男として、ウハウハの生活を送る宇宙旅行者ですが、さすがに、疲れます。何万人もの女性をたった一人で相手にできるわけがない。でもほかの男を連れてくるなんて、もってのほかです。その男が自分よりハンサムだったら、女たちがみんな、そっちの男になびいてしまうじゃないですか。そこで男は考えます。そうだ。自分のクローンを作ればいいのだ。クローンなら顔も同じだし〜。で、この男がバカで、よせばいいのに、何千人も作っちゃうんですな。

 さて。クローンが出来ました。女たちは「カワイイー」とかいって育てはじめます。ですが、男なんか育てた経験は彼女たちにありません。で、育てられたクローンは、みんな「女」として成長してしまう。つまり、大量のオカマが出来てしまったのです。しかも、自分と同じ顔の! そいつらがみんな「パパ〜」なんて迫ってきた日にゃあんた…… 気持ち悪い〜 でも、ちょっとはおもしろいでしょうか?

 むう。けっきょくバカ話になるか…… しょせんTERUの発想なんて、こんなもんでしょう。でも、もしも、おもしろいアイデアが浮かんだら、その時は、本当に書くことにいたしましょう。


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